スマトラ島沖地震支援事業 第二次中間モニタリング報告書
特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォームNGOユニット
7.モニタリング・視察結果
7−7.【スリランカ】「スリランカ被災者へのVHF非常無線網構築・FM放送局開設支援」:BHN
- 調査日:2005年6月3日(金)、6日(月)
- 調査団体名:特定非営利活動法人BHNテレコム支援協議会
- 記入者:桑名恵、児玉光也
- 調査国・地域:スリランカ国ハンバントタ県、アンパラ県
- 視察方法(聞き取り、訪問等):政府関係者に対するインタビュー
- Mr. W.W. Sunil Raja Peksha(Chief Cleark)@ハンバントタ県庁
- Mr. Kasun Malinda Rajapakshe(Technician in-charge)
- Mr. Janaka Kodithuwakke(UNV-Hambantota)
- Mr. U.P.I. Anuruddha Piyadasa(Assistant Government Agent)@アンパラ県庁
- Mr. M. Sajahan
- Mr. A.W.M. Fahim(INGO Coordinator, UNDP)
- Mr. I.P. Weerasena(cc/DMU (Disaster Management Unit))
- Mr. S. Ramakreshnan(Divisional Secretariat)@アンパラ県Karathiu郡長
- Mr. V. Vasuthevan(Divisional Secretariat)@アンパラ県Kalmunai Tamil郡長
- Mr. A.H.M. Ansar(Divisional Secretariat)@アンパラ県Muslim Division郡長
- ハンバントタ県庁@6月3日(金)
- アンパラ県庁@6月6日(月)
- アンパラ県Karathiu郡庁@6月6日(月)
- アンパラ県Kalmunai Tamil郡庁@6月6日(月)
- アンパラ県Muslim Division郡庁@6月6日(月)
1.事業目的
被災地において情報伝達環境が改善されること。
2.現地事情:
ゴール、マタラ、ハンバントタ、アンパラ、トリンコマレー県は、スリランカ国の東部から南部にわたる、それぞれ海に接し、津波により甚大な被害を被った地域であり、JPF参加GOが活動を行った地域でもある。
(各地被害状況はプロポーザルから抜粋)
- ゴール:公衆回線用の交換機は、設備されている建物の2階にあったため無事であった。12月31日より通信サービスは開始した。しかし、加入者線や電話機が津波でながされているため、被災者は電話使用不可能である
- マタラ:公衆回線用の交換機は、設備されている建物の2階にあったため被害はあるものの修理は可能。12月31日より復旧工事を開始した。しかし、加入者線や電話機が津波でながされているため、被災者は電話使用不可能である。
- ハンバントタ:公衆回線用交換機が設置されている建物ごと津波で流され、公衆回線用マイクロウェーブ鉄塔は、2本ある内の1本が倒壊していた。12月31日現在、は復旧していない。1月3日現在、地上局の復旧に当たっていた。作業責任者によると「1週間かけて、地上局の回線をトラックに積まれたオペレーションシステムに繋いで回復させる予定だと話していた。」倒れた鉄塔の本格的な復旧は、夏ごろの見通しであるとのことであった。
- アンパラ:公衆回線用の交換機は、内陸部にあったため無事であった。12月31日より復旧工事を開始した。しかし、加入者線や電話機が津波でながされているため、被災者は電話使用不可能である。
- トリンコマレー:公衆回線用の交換機は、設備されている建物の2階にあったため被害はあるものの修理は可能。12月31日より修理を開始した。しかし、加入者線や電話機が津波でながされているため、被災者は電話使用不可能である。
3.事業概要:
スリランカ国Telecommunication Regulatory Commission(TRC)(周波数割当に関する所轄官庁)と協働し、以下2つの活動を行った。
- ゴール、マタラ、ハンバントタ、アンパラ、トリンコマレー各県において災害対策本部で活動している支援分野別のチームにVHF無線機(以下、無線機)を提供し、非常無線網を構築し情報の授受を敏速に行う。無線機の使用方法は、チームの活動内容に応じて必要度合いの高いスタッフ順に無線機を所有する。(各県に無線基地局2台設置、無線機20台配布)
- ハンバントタ県におけるFM放送局(以下、ラジオ局)の開設と被災者へのFMラジオ(以下、ラジオ)の配布によって被災者への情報伝達環境を改善する。なお、この放送局は、沿岸部から山間部へ非難した被災者へも放送が十分に届くよう設計される。(ハンバントタ県ラジオ局1セット設置、ラジオ5,000台配布)
4.第一期との変更点、改善が必要と思われた点等
なし
5.変更申請されたプロジェクト(詳細は支援プロジェクトに記入)
無線機配布数をアンパラ県20台、トリンコマレー県20台から、アンパラ県40台、トリンコマレー県0台に変更。
政府関係省庁に周波数の割り当て、許認可等を得るのに時間を要し、事業開始時期が1ヶ月遅れ、その後遅れを取り戻し、最終的に8日間遅れる見込みとなったため、8日間の期間延長。
6.視察所見
- プロジェクト所見
- ハンバントタ県におけるラジオ局の開設は、地方住民が自らの情報を発信していく新たな機会を生み出し、県職員や放送従事者は放送プログラム作成や放送に対し、高い動機が見られた。また、県庁やUNDPの関心も高く、関係者が主体的に放送事業を運営していくことが期待されている。
- 必要なアクション、是正措置
- 一般的に、電気通信事業は食糧支援などとは異なり、軍事利用等を避けるためにも、事業実施中はもとより、事業後の管理運営も明確にしておく必要があり、通信省など中央政府との協議・調整や許認可取得業務に時間を要す。本事業では、計画よりも予想以上に協議・調整に時間を要したことを鑑みると、十分な事業実施期間を取っておく必要がある。
- 無線機整備においては、無線機の使用周波数確保、各県の無線基地局設置、無線機に関する講習活動など、活動スケジュールが過密な中、短期間に作業がなされた。しかしながら、ハンバントタ県では送受信についての十分な研修がなされなかった為、技術上初歩的なトラブルが発生し、その後のフォローアップがなされておらず、ほとんどの無線機が利用されていなかった。またアンパラ県では受信は可能であるが、未使用である無線機のフォローアップが必要である。これらを防ぐためにも、講習や研修、モニタリング、フォローアップの期間を考慮に入れ、計画を策定することが求められる。
- 緊急フェーズを過ぎようとしている現在、所有権と通信許認可権を持つTRCと、機材を管理・利用している県庁との間で、今後の利用について調整が必要な状況である。通信機材を供与するのであれば、プロジェクトの計画・実施時に長期的視野にたった調整が必要である。
- 事業計画書が変更され、アンパラ県に対して40台の無線トーキーが供与されることとなったが、28台は計画と異なる配布がなされて、12台は本モニタリング調査時には利用されておらず、またハンバントタ県ではラジオ5,000台中1,000台以上が配布されていなかった。計画時における被供与側(県庁)との協議が不十分で、かつ配布・利用計画が準備されないまま、事業が展開されたことに起因すると考えられる。緊急に必要なアクションとして、確定して否ラジオ1000台の配布先と、使用されていない無線機への対処、およびモニタリングを実施しなかった他見での利用状況の確認が必要である。仲介者(県知事)に渡すことで終了するプロジェクト計画ではなく、事業期間に受益者に配布物資が届き、適正に使用されているか状況確認するまでを計画に含み、プロジェクトを形成する必要がある。配布・利用計画の見直しが求められる。
7.総括
- スリランカ南部、南東部、東部にかけた被災地域4県を対象とし、情報が遮断・錯綜する緊急期において、通信事業支援に対する他援助機関の供給は少なく、事業実施の意義は大きい。また、無線整備により、電話のような一対一コミュニケーションではなく、一対多のマスコミュニケーションを容易にする本支援は、極めてポテンシャルが高い事業である。
- しかしながら、計画段階から仲介者である県庁に無線機やラジオを贈与することで事業が完結しており、受益者への物資配布や、使用確認がなされない段階で事業が終わっていた。通信機材供与事業のポテンシャルが十分に活かすためには、計画初期段階から、実際の利用者を巻き込み十分な協議・調整を行い、ニーズを確認したうえで、配布・利用体制を構築し、配布・利用状態のモニタリングが求められる。
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