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スマトラ島沖地震支援事業 第二次中間モニタリング報告書
特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォームNGOユニット
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9.課題と教訓

インド、インドネシア、スリランカ、タイの4カ国で実施された緊急援助に対するモニタリングでは、つぶさに各団体が実施している支援プロジェクトを、さまざまな視点から見ることができた。各国で実施されたモニタリング活動の過程でさまざまな課題と教訓が浮かび上がった。ここではこうして抽出された問題をまとめて、今後のJPFの助成活動ならびにNGOによる支援活動の質的向上や実施体制整備への一助にしたい。


9−1.JPFプロジェクトのあり方

今回、各団体による津波被災者支援事業においては食糧配布、物資配布、職業訓練、農業支援、各種教育、雇用創出支援などさまざまな事業が実施されたが、各団体による事業の捉え方、実施方法の違いが大きく浮き彫りになった。本来、事業の実施方法などは各団体の裁量の分野ではあるが、ドナーに対する説明責任をはじめ、質と効率性の確保のためにも合意された範囲でのJPF参加団体としての最低限の実施体制整備と実施方法を共通認識、ガイドラインとして確立する必要性を、モニタリング活動を通して認識した。


9−1−1. 事業形成(期間、裨益者、地域の選定)

スマトラ沖津波被災者支援において、各団体は災害発生時直後に現地入りするなど、非常に初動態勢の良かった緊急援助であり、その支援活動も迅速に開始された。他方、事業形成における初期調査の方法は各団体でかなり異なり、その結果、事業期間、支援対象者、支援対象地域などの選定に違いが出て事業内容もそれぞれ異なる結果となった。団体ごとに事業形態が異なってはいるが、効率性や有効性において一定のクオリティコントロールをしていくための方策が必要であろう。
一方、事業開始後支援内容に関する変更申請が多く、ニーズを把握するための調査の精度が今後の検討課題として上がった。刻一刻とさまざまな状況が変化する緊急援助の初期において、精度の高い調査を実施することは難しいものであるが、ニーズ調査が事業採択のための手続きのための簡単なプロセスになってしまうのであれば、本来のニーズ調査としての意味を失うおそれがある。詳細な調査による費用対効果、ならびに調査実施期間の問題というものが発生するが、JPF助成の事業においては最低限の調査項目、現実的な調査期間を設定していく必要があるのではないか。同時に、事業実施中にも情勢変化に対するモニタリング、フォローアップが常時実施されるよう明確に事業実施体制に組み込むべきであろう。


9−1−2. 連携

スマトラ沖津波被災者支援事業においてはさまざまな支援態勢がNGOにより現地で採られていた。 第一に自己完結型の実施体制がある。これは支援事業がすべて参加団体によって実施されているパターンで、事業の調査、立ち上げ実施に関してのすべての分野で団体独自に行っている形態である。現地NGOとの連携は、参加NGOがメインパートナーとして資金提供、物資提供などで行われていることが多い。インドネシアにおけるPWJの事業形態がこれにあたるだろう。PWJはインドネシア・アチェのムラボ郡において現地NGOと協力関係を結び、女性支援プロジェクトや農業研修などを実施した。
第二の体制は参加NGOと現地NGOの連携により事業を実施する形態である。JPF助成のプロジェクトを現地NGO等との連携の中で実施するもので、現地NGO等の能力を活用した連携方法であり、緊急援助で現地に入った参加NGOで、現地に活動基盤がない団体にこの形態が多く見られた。スマトラ沖津波被災者支援の場合はスリランカにおけるAAR、IPAC、JCCP、JEN、BHNであった。参加NGOの中には、現地NGO等への全面委託とも受取られるような実施体制も見受けられた。
全面委託に近い実施体制では、プロジェクト管理方法などにおいて、参加NGOによる現地NGO等との調整が困難になっている例があった。今後は連携において参加団体が責任を持つ、選定基準、会計などの分野の明確化が必要だろう。
第三の体制は国際NGOのパートナーシップの中で事業を実施する形態である。これは、国際NGOの日本における団体としての長所を最大限に利用したもので、複雑かつ時間のかかる活動国におけるNGO登録や現地人材の確保、銀行口座開設、そして現地事務所の設立といった実施体制整備を不必要として大きな効果を発揮する。インドにおけるADRAジャパン、WVJ、そしてスリランカとインドネシアにおけるSCJなどである。他方、「コモンバスケット方式」による会計処理の管理や、多数の団体から国際スタッフが現地に派遣されることによる調整等、課題もある。


9−1−3. 事業形成

事業形成も今回参加団体の持つ援助理念、援助方法が大きく問われた分野であり各団体で大きな違いが見受けられた。
予算の組み方においては直接費と間接費のバランスに対する考え方や、人件費の積算方法が異なっていた。事業における間接費の予算規模の設定が団体それぞれによって異なっていたり、本部人件費をプロジェクト期間中全額積算していたり、一部だけを積算していたりしていた。


9−1−4. 事業内容

活動内容に関して、第2期以降野事業では多くの団体が物資配布事業や職業訓練等のソフト事業を取り入れる等、様々な形態の事業を展開していた。
多くの団体が支援事業を実施する中、同種事業においてその内容にバラつきが見られる。特に緊急援助期の場合、運営管理体制は各団体によって異なる。配布事業として、どういったものを配布するのか、上限金額や品目の設定等の必要があった。また、事業内容として、明確に裨益者を特定して配布後のモニタリングまで実施する団体や、物資を調達して現地NGO他に供与して事業完了している団体もあった。各種事業の質確保のためには事業内容のある程度のモデル化が求められるのではないか。

9−1−5. 事業期間

今回の各団体の事業の多くは延長申請をしており、設定実施期間で事業を完了させることの難しさが明らかになった。天候の悪化とそれに伴う道路・交通事情の問題など不測の事態も発生し、事業の遅延につながっている。一方、当初より達成目標が高く設定されている場合もあり、各団体の現実的で事業期間に則した目標、事業内容の設定が求められる。特に緊急援助実施地域では天候をはじめ、二次災害、治安の悪化等、予測できない状況が発生することが多く、余裕を持った事業計画、事業内容が必要だろう。さらに、第1期における実施期間が45日間と比較的に短く、この期間で実施態勢を構築しながら緊急援助を実施しすることの困難さが明らかになった。特に、今回のような巨大な自然災害においては中長期的な事業計画と被災地への関わりが必要なことから、どの団体も当初から45日間以上の援助が必要だった。このため、第1期を実施しながら第2期を申請し、第1期が終了せぬまま第2期に移行するという事態も生じた。今後は被害程度の大きさ、ニーズの規模を勘案して被害程度の甚大な災害、紛争においては、支援現場における実施体制と運営管理体制の充実のために助成期間の拡大を図る必要があるだろう。


9−1−6. JPF事業としての終了プラン、フォローアップ

JPF助成で実施された各種事業をどのように継続させるか、または終了させるかということもこれから検討が必要な大きな課題である。JPF助成の対象でない事業や、別の形態の事業を展開する場合の、それまで実施した事業との連携、橋渡しなども検討する必要があるだろう。
特にソフト事業であるが、各地で見られたソフト事業の実施はニーズが緊急援助から復旧へと向かっていることの証左であった。この中で、事業のインパクトの維持と効果を確保するためには継続した事業展開が必要な場合が多い。このため、JPF助成事業終了後の自己資金・別資金確保による展開や、他団体への引継ぎ等、フォローアップ方法を確保するなど一連の終了プランを早い時期からそれぞれ検討する必要があるだろう。


9−2. 管理執行体制


9−2−1. 資金管理

プロジェクト実施経験が少ない団体では、現地NGOとの覚書(MOU)の締結や、資金管理体制の構築等に時間を要していた。今後、JPF事業に参画するプロジェクト実施経験が少ない団体には、ガイドライン等を用いた適切な説明が必要であろう。
緊急期(第一期)には協力国政府からNGO登録が認められていないために銀行口座を開設できず、文字通り腹に巻いてプロジェクト資金を持ち込む場合もあった。
また、多くの国では被災地が首都から離れており、銀行はあるものの、受け渡しに時間がかかり、機能していないところもあった。
緊急援助の際には、現金持込手段の確保が課題となり、JPF事務局は参加団体の資金管理方法に関する勉強会の開催など知識の共有が求められる。


9−2−2. 人員体制

十分な人員がとられず、担当者が業務の管理、運営、会計、調整をすべて兼務するなど、業務過多である団体もあった。緊急支援体制構築にあたって、迅速に新しくスタッフを採用し、参加NGOにおける人材の広がりが見られた一方で、事業実施に必要な人員の確保が困難となる団体もあった。必要な人役を措置できなければ、スタッフへの負担増や事業の効率、質の低下に繋がり、事業全体に及ぼす影響が大きい。今後は人役措置において、JPF事務局と事前から協議する必要があると思われる。
団体内の既存スタッフを従事させる場合も、団体の事業全体に及ぼす影響を考えて判断されるべきである。また、事業実施期間中に病気に罹り、入院する等の緊急事態を想定した予備人員の配置が求められる。


9−2−3. 治安面での配慮

スリランカやインドネシアでは、もともと紛争要因がある地域で活動する団体もあったが、多くの団体は、衛星携帯電話を各プロジェクト地に1台確保し、日本人スタッフ及び主な現地スタッフは携帯電話を利用する等、随時連絡を取れる体制にあった。
日本人スタッフが、現地住民とコミュニケーションを良く取り、良好な関係が認められ、現地スタッフや住民との良好な関係が、安全管理の一環となっていた。日本国内事務所との連絡も頻繁になされていた。


9−2−4. 資器材(固定資産)の管理

現在、JPF助成において緊急援助として期間設定している中で、事務所の設置や固定資産の購入をどうのように取り扱うか明確な指針がない。第1期、そして第2期と事業を継続して実施するのであれば、事務所の開設や固定資産の購入も検討の余地があるが、現在はそうしたガイドラインが存在せず参加NGOによる個々の判断で実施されている。このため、長期プロジェクトを見込んだ準備をJPF助成金によって行っている団体も見られるのが現状である。継続してJPF助成金を獲得してプロジェクトを実施するのであれば論理的説明が付くが、他の資金を獲得してプロジェクトを実施するのであれば初期投資が不必要になり安価に実施できることになり競争力が高まるものの、予算の妥当性という観点では問題があるだろう。しかしながら、今回のスマトラ沖津波被災者支援のように長期にわたる支援の場合、車両などの固定資産の購入や事務所の整備はかえって効率化を図れるというメリットもあり、今後はJPFによる現地事情の調査を支援開始初期または事前に実施して検討する必要があるだろう。


9−3. JPF参加団体間の連携

事業実施地域・内容の重複が、起こりそうなケースがあった。その背景には、緊急支援時期において調査、プロポーザルから実施段階に至るまで、JPFも含む関係者において部分的、断片的な情報把握が連続していたことが要因としてあげられる。結果、現地の事業開始段階直前まで重複が判明しなかったものである。
今後の重複回避の対策として、同時にフィージビリティの検討にも関わる点として、プロジェクト形成時の事前協議など、具体的な調整面の是正措置が望まれる。また、参加NGO間においては、JPF参加という立場からも、コミュニケーションをより密にし、情報交換の場が生まれることが望ましい。


9−4. 広報

現地での効果を高めるべく、現地語表記による各種ツールの製作も検討する必要がある。現在、特に配布事業では、日本の支援であることを、英語を理解しない裨益者には理解されていない状況が見受けられる。日の丸の国旗を示したステッカーによっても、物資が日本製品であるとしか認識されない事例もある。各種現地語による版下をJPFで用意しておき現地製作をしてもらう、または常時使用できるステッカーや横断幕など各種現物を確保しておく等、各地域状況や事業規模に柔軟に対応できる広報ツールの整備を検討する必要がある。
また、現地での情報発信体制の整備も必要である。認知拡大を目標としても、各NGOによるそれには内容や手法に限界がある。今回、モニタリングミッションが広報活動の一端を担うという側面があったが、それはJPFからの派遣として現地で活動をしたことによるところが大きい。常時、現地で広報的な役割を担えるJPFの人員がいるのではない状況を踏まえ戦略を展開するのであれば、少なくとも事務局における広報分野の取りまとめが望まれる。そのうえで外務省や在外公館との連携を進め広報活動を行うのが効果的であろう。同時に、国際機関・組織に対しても、情報発信を一括して行うシステムの整備もなされたい。各機関・組織と連携するうえでもJPFの広報性を高めることは重要である。広報活動は対外的であると同時に、結果的に国内へフィードバック、宣伝性を高める効果もまた期待できる。人的ネットワークの情報を把握する広報担当者がいれば、JPF参加団体間を結びつけ連携を強化させる役割がはたされる可能性も高い。


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