先般実施されたスマトラ沖大地震に関する第1回ワークショップおよび個別団体へのヒアリング結果をもとに、戦略的アカウンタビリティのフレームワークを用いたアカウンタビリティ・システム構築実現のための、具体的なアクションプランを策定する。
■ ワークショップ内容 |
(1) 第1回ワークショップまとめ |
- NGOのJPFアカウンタビリティに対する認識
- 組織戦略の明確化
- ステークホルダーマッピング
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メモ: |
- [金]:
- 概要説明、経過報告(第一回WS、ヒアリングなど)
今回のWSでは具体的なアクションプラン作成を目指す。
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(2) ヒアリング内容報告
- 各ステークホルダーとのつながり
- アカウンタビリティを果たす上での障害/課題
- 目指すべき方向性/今後の活動計画
- 団体独自のアカウンタビリティ
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メモ: |
- [金]:
- 外務省、経済界との関係性はある。だがそれ以外のステークホルダーとの関係性を作っていく必要がある。
- (AARによる指摘)【理想】
- (1)説明責任、(2)今後のつながり
- 【現状】
- JPFスキームはプロジェクト・ベースの活動なので、プロジェクトごとに関係は途切れてしまう。JPFを媒介としていることの構造上の問題もあるかもしれないが、JPFを通して各ステークホルダーとより密接なつながりを形成していくことも可能だろう。
- [PWJ]:
- (1)と(2)の関係を考えると、説明責任を果たせば、(同時に)その後の今後のつながりがついてくるのではないか。
- [AAR]:
- 「説明責任」というのは様々な意味があると思うが、現状においては義務的要素が濃いものとして捉えられているのでは。(もっと積極的に捉えなおして)説明責任を果たすことで、(たとえば次の緊急事態により円滑な支援を提供してくれるというような)今後の活動にもメリットが生まれると考えても良いだろう。
――
- [金]:
- 外務省、経済界は(JPFにとって)主要なステークホルダーを担っているが、その背後にある納税者や個別企業といったステークホルダーたちとのつながりは弱いだろう。しかし今回の表題にもあるように、アカウンタビリティを戦略的に行っていくことで、今までつながりの弱かったステークホルダーにアプローチできるのではないか。
――
- [金]:
- 外務省に対するアカウンタビリティで大きく関わってくるのは報告書である。
既存の報告書は当初の計画に従っているかどうかということに重点が置かれているが、実施側としては、事業の“成果”まで含めた評価をしてほしいとの声があった。しかし、(関西NGOからの指摘で)報告する際に成功事例だけではなく失敗事例も含めるべきだろう。「成果」には「失敗」も含まれるのでは。
- [HuMA]:
- 現状において外務省が求める報告書は成功事例を要求しているのか。
- [谷口]:
- 外務省の場合、計画書にどれだけ忠実に事業を実施できたかを要求している。事業の良し悪しということではなく、当初の計画との整合性が重視されているため、現在の報告書もそのような要素の強い形式となっている。これはこれで必要だろうが、NGOとして実施事業によって現地に何がもたらされ、どのような効果を持ったかということまでは焦点となっていない。
- [金]:
- 現在の企業のアカウンタビリティのあり方には、現在の“成功”さえも明日には“失敗”になりうるという認識がある。もし現在のNGOが成功事例しか出さないということであれば、その認識を考え直す必要もあるのかもしれないだろう。
- [HuMA]:
- 「失敗事例」の出し方が問われるだろう。「失敗」というネガティブなイメージをもたせるのではなく肯定的に捉えなおし、説明していく必要があるだろう。
- [WVJ]:
- 失敗を失敗として(最後までやってしまって)報告書を書くのか、ということになるのだろうが、まず失敗をしないためには、それはモニタリングの問題であり、現在モニタリングのあり方が問われている。計画されたものを途中で見直して、(失敗であれば)逆に成功に導いていくようなものが、モニタリングの一義的な機能である。これまでの“事業→評価→事業”というサイクルは遅いのではないか、という声もあり、実際現在では、事業実施中に関係者が集まってラーニング・イベントが行われ、事業の方向性が修正されていく方法がとられつつある。つまり、事業終了後に(「成功」/「失敗」)として報告するのではなく、リアルタイムで事業/評価サイクルを動かしていくべきだろう。
- [PWJ]:
- モニタリングと評価(evaluation)を概念的に区別するとすれば、事業実施中に事業計画を見直して修正していくモニタリングがある一方で、どのような成果が得られたかということを査定するのは評価(evaluation)の問題であり、そこにはどのような基準をもって“成果”を測定していくのか、ということも問われている。モニタリングは計画が基準となって分かりやすいのであるが、評価ということになると、例えばスマトラ時の評価を外部専門家に委ねたが、専門家の視点でなされた評価を一般化、あるいは標準化できるかどうかは難しいだろう。
- [谷口]:
- スマトラ時には中間モニタリングがとられ外部専門家に委ねたが、その時は専門家の視点から事業の改善点をアドバイスしてもらうという要素があった。だが、現在JPF事務局としてモニタリング・ミッションを立ち上げているが、具体的な評価基準があるわけではない。JPFのフレームの中で自分たちの反省点を見出して評価するということになるだろう。
- [AAR]:
- JBICはどの団体に依頼しても「ダック5項目」を基準にして厳密な評価指標を用いるように指導しているように、JPFとしてもそのような指標をつくるべきだろう。
- [JCCP]:
- JICAや国際機関の評価基準を見てみると、計画の段階で既に評価指標を設定する手法がとられている。「成功」か「失敗」かは評価を伴うものであり、現場とは離れた視点でなされるべきものであろう。報告書の段階で評価をする(つまり実施側がその是非を判断する)というよりは、(実施側はむしろ)評価するための適正な材料を提供する姿勢も必要だろう。
――
- [金]:
- 個別企業とのつながりという側面はどうだろうか。ある種ドナーの競合関係がある中で、各NGOがJPFを通して企業にアプローチすることについてどう考えるか。AARからは、JPFに資金提供していることが(他のNGOに支援しないという)excuseにもなるのでは、という指摘もあった。
[AAR]:ヒアリング後、事務局内で検討したところ、必ずしも競合関係にあるというわけではなく、JPFを通したつながりがある一方で、個別な関係を構築できうるという、両立の方向が可能であろうという認識に至った。
――
- [JCCP]:
- 企業にアプローチする場合、企業を何と結びつけるかによって意味が異なってくるだろう。企業⇔NGO、企業⇔受益者?現地の受益者にとってドナーの存在は見えにくいものであると感じてきたが、単に資金を提供する立場ではなく、企業が持つ技術など様々な価値を活用/提供することによってドナーと受益者の関係も異なってくるだろう。
- [金]:
- スマトラに関しては経団連とのミッションもあったのでは。
- [谷口]:
- スマトラ時には事業後に経団連からの評議会メンバーにモニタリングに行ってもらった。経団連の視点から事業を見ることによって理解を深めることができるのではないかということもあり、パキスタン地震の際にも経団連に呼びかけてもらって支援を得られた。
――
- [PWJ]:
- 各NGOが強みを持っている分野を提示し、企業側がそれを見て関心のある分野のNGOにアプローチできるような仕組みができれば、すなわち双方のニーズをマッチングさせることができれば競合関係はなくなるのでは。
- [金]:
- それは(NGOにとって)受け身の姿勢ということになるのか。
- [PWJ]:
- 実際の事業ではNGOと企業との協働体制なので、そこで主体性が発揮できれば。
――
- [WVJ]:
- 個別NGOとJPFの競合関係について議論する以前に考えるべき問題がある。それは日赤の存在である。経済界からの寄付は大部分が日赤に流れているが、それは現在までの伝統的な関係や慣習的な部分があるからである。様々な支援団体がある中で、ドナーにとってどの団体に寄付すべきかが差別化しにくい現状がある。JPFとその他の団体との競合関係を整理し、JPFの優位性・特徴はあるので、それを積極的に打ち出す必要があるだろう。
- [AAR]:
- 企業の中には、日赤とJPF両方に同額を寄付し、報告会の内容から次回からの支援をJPFに決めた、というケースもある。
- [谷口]:
- (今回のアカウンタビリティの目的でもあることだが)提供された資金が、どれぐらいをどのように/何に使われたかという、ことを説明する仕組みを構築し、そういった仕組みがある、ということを企業にアピールする材料にすることも可能だろう。これはドナー獲得を競合するということとは別種のアプローチである。
- [HuMA]:
- (赤十字の件で)緊急支援に集まった資金を復興目的に流動することに問題はないのか。
- [WVJ]:
- 国際赤十字の方針として、(スマトラの場合)災害後5年間に渡って復興フェーズも含めた支援を実施する、という方針をとっており、災害支援に集まった資金をその方針の中で分配していっている。
- [金]:
- (上記の例でいえば)それがドナーにうまく伝わってないということになる。
――
- [金]:
- 学識界との関係はどうだろうか。(自然災害支援ではスピードが問われているためできないが、)たとえば事業実施地の詳細情報(文化、慣習、安全情報、タブーなど)を学識界から事前に提供してもらうなどの方法があるだろう。
- [HuMA]:
- 地方には国際交流や国際ボランティアということに高い意識を持った学生もいるので、そこの非常勤となったり報告会を開催したりするのも、接点を持つ一つの方法なのでは。
――
- [金]:
- 民間財団について。今回のプロジェクトも財団の資金であり、(WVJから指摘があったが)NGOのキャパシティ・ビルディングに支援してもらえるような関係性づくりをしていければ。
- [WVJ]:
- ビル・ゲイツの財団はNGOのキャパシティ・ビルディングを積極的に行っている。災害支援のような個別プロジェクトではなく、人への投資という側面に民間財団の資金は比較的使いやすいのではないかと考えた。だが実際には緊急支援に資金提供する財団は多い。
――
- [金]:
- 地方自治体に関して、関係性が薄いという声があがった一方で、地方には潜在的なドナーが存在するという意見もあった。
- [谷口]:
- 地域は東京に比べて敷居が低いのではないか。(個別NGOが地域にアプローチするのはあまり効率的ではないので)はじめはJPFとして報告会イベントなどのPRを行い、それを導入部として個別NGOと一般個人/地域企業つながっていく方法もあるだろう。こういう視野において地方自治体をステークホルダーとして認識することもできるだろう。
- [HuMA]:
- 広島は“国際平和都市”、岡山は“国際貢献都市”ということを打ち出しているので、アプローチしやすいのでは。
――
- [金]:
- 国際機関について。
- [JEN]:
- 緊急の初動フェーズから復興に移る過程で国際機関との連携の可能性があるのでは。
- [WVJ]:
- 準備段階に資金が出てない現状がある。複数の団体が協働する場合に現場に入って迅速かつ円滑に支援を行うためには、現地での役割分担をコーディネートしていく必要があり、そのためには国内レベルで事前に情報共有し、長い目でシナリオ作成していく必要がある。USAIDは現場でNGOがコンソーシアムを主宰し、他のNGOに現地の文化に対する研修とか安全管理についてのトレーニングを行っている。
- [PWJ]:
- UNHCRはスタンバイ要員に研修機会を提供している。たとえばJPFの中からUNHCRのスタンバイ要員に登録し、トレーニングを積み、現地ではUNHCR職員として働き、契約終了後にJPF職員となる。
- [JCCP]:
- スマトラの場合UNは遅く、JPFは早かったので、UNとの協同もデメリットやリスクを考慮すべきだろう。
――
- [金]:
- メディアについて。
戦略的なメディア・アプローチがなされているだろうか。JPFが情報発信をする場合にはNGOの名前があまり出てこず、NGOが情報発信する場合にはその逆があり、相互に一方の存在を薄めあってしまう現状があるのではないか。
- [谷口]:
- この点に関してJPF事務局側として問題なのは、JPFとして何がやりたいのか、ということをうまく認識・説明できてないことが挙げられるだろう。それは、JPFが果たしてどういった存在なのか、ということを事務局側としてまとめ切れてないという現状がある。JPFの定義を定型化し、個別NGOに共通認識を持ってもらう必要があるが、いまだ現状において議論中である。
- [WVJ]:
- JPFとしてメディアをどのようなステークホルダーとして位置づけているかを考える必要があるだろう。たとえばMSFは「第二のドナーである」と認識しているが、JPFはどうであるのか。現在メディア・アプローチはJPF側と個別NGO側からの発信との2トラックが存在するが、JPFは緊急支援に焦点を絞っているのに対し、NGOは緊急フェーズだけでなくその後の自団体の活動継続にまで考慮する必要があるため、どうしてもメディアに対する態度に違いが生じるだろう。
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(3) アクションプラン策定
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メモ: |
- [金]:
- まずアクションプランを実施する方法として、(1)JPFのみ、(2)JPF+資金(助成)、(3)JPF+NGO、(4)JPF+NGO+資金、という4方向があるだろう。今後アクションプランを策定するに当たって、どのスキームに落とし込むかを考慮する必要がある。
そしてアプローチする方法としては
- 積極的アプローチ(=資金・人・技術の提供者)
→既に関係を持っている対象。個別対応。
- 一般的アプローチ(=市民/納税者、学識界、地方自治体など)
→現在関係性がない/薄く、これから関係性が生じる可能性のある対象。情報発信が主。
の二つがあるが、どう思うか。
1に関して、外務省には積極的アプローチするべき対象だと思われるが、その背後の納税者・市民に対しては態度が異なるだろう。
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- [ICA]:
- JPF活動地域出身の留学生と関係を持ち、報告会に話してもらうなどの接点の持ち方がある。だがJPFとNGOとの関係を定義し、どのように見せるかによってアピール方法が異なるだろう。
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- [AAR]:
- 日赤/ユニセフに対抗しうるファンドレイジングを達成すべく、まず評価基準を設定すべきではないだろうか。
- [WVJ]:
- その際には現在進行中であるガイドラインの枠組み作りのワーキング・グループとの兼ね合いを考慮すべきだろう。また、評価基準をどこから持ってくるのか、ということも考えなければならない。
- [AAR]:
- もしそのワーキング・グループと内容が重複する可能性があるなら、わざわざこの場でタスク・フォースを立ち上げる必要はないだろう。
- [谷口]:
- だが議論を進めていく中で、個別のテーマにチームを組む必要性がある場合、今回のWS参加NGOにも協力を依頼していくと思われる。
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- [WVJ]:
- メディア戦略についてはどうか。
- [JCCP]:
- プレス・パッケージ作りは進めるべきだ。
- [金]:
- ウェブサイト活用について
- [谷口]:
- たとえば掲示板を利用して、個別NGOが自由に活動内容の情報(リンク)を書き込む。事業後ではなく、初動段階や途中でこれからどういう事業をやっていくのか、ということを情報発信できれば、つまり早い段階からアカウンタビリティを果たす必要があるという声がある。
- [JCCP]:
- 技術的な問題をクリアすれば対応可能だろう。また、(初動はともかく)現在週報を配信しているが、それをネットワークにリアルタイムで配信していくといったことも考えてみては。
- [SVA]:
- JPF資金と自己資金を併用して活動している団体の場合、どのような配信の仕方が望ましいかを検討すべきだろう。ホームページに限らずプラットフォーム全体として考えるべきものである。
- [谷口]:
- パキスタンに関しては、ホームページにおいてJPF資金と自己資金は色分けして区別している。だがこれから議論を進め、正式なルールを作成していく必要があるだろう。
- [WVJ]:
- 現在の週報の形態には問題がある。週一のぶつ切りの情報を送られても(しかも量が多い)全体像が見えない限り読みづらいものとなるから、その点も考慮すべきだろう。
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- [WVJ]:
- 学識界との関係作りにしても、個別NGOがやるのかJPFとしてやるのか、どちらの枠組みで行うかによって性格が異なる。
- [HuMA]:
- 国際ボランティア学会や国際医療学会のように国際的な学際組織では、学会の場で事業実施組織や団体がブースを出してPRの場となっているところもある。そうした意味で、実施事業への関心が集まりやすい学会を選択してアプローチする方法が考えられるだろう。学会へのアプローチはハードルも高くなく、すなわち学識界へのアプローチとなる。
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- [WVJ]:
- 今回の件に関して、個別団体(JPFと各NGO)にどのようなニーズがあるのかを掘り起こす必要がある。現状においてそれぞれが感じている問題意識を整理して、そこにアプローチする。
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(4) まとめ&成果物共有の流れ
- 想定されるステークホルダーとは誰か(具体的な組織を考える)
- 各ステークホルダーに対して果たすべきアカウンタビリティとは何か
- 今回の災害対応において適切にアカウンタビリティが果たされたか
(スマトラではカバーされなかったが、本来アプローチすべき組織は?)
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メモ: |
本日提示されたアクションプラン=ワーキング・グループ。
(数字は前述メモの(1)〜(4))
・メディア戦略作り:プレス・パッケージ(一般向けJPFの説明〜(1))、HP−掲示板〜(4)、PR〜(3)or(4)
・経済界戦略作り〜(3)or(4)
・地方自治体‐留学生‐JPF〜(4)
・学識界(学会への参加)〜(3)or(4)
・キャパシティ・ビルディング〜(3)
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