SVA
Shanti Volunteer Association


緊急支援事業計画書
事業対象地状況
移動図書館車、図書箱のサンプル【pdf】
対象地域学校の被災児童数
対象地域地図



事業対象地状況

(社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)
スマトラ沖地震・津波被害緊急救援事業
南タイ被災児童の心のケア事業
被災地の状況と現在の援助ニーズ

1.対象地域の状況:

今回のスマトラ沖大地震・津波被害ではタイ南部6県にも甚大な影響をもたらした。その中で比較的被害の大きかったのがパンガー県タクア・パー郡周辺地域である。この地域では、郡内の村や学校が壊滅的な被害を受けており、死者・行方不明者は3,000人を数えている。またミャンマーからの漁業労働者が、5,000名居住していたこともあり、被災者の中にはこれらの人々も多数含まれている。さらに水上生活を送っているモーケンといわれる人びと1,000名以上(正確な数は不明)も大きな被害を受けた。

1月中旬になって、パンガー県タクアパー郡周辺では、物資輸送車や遺体搬送車で渋滞する光景は見なくなり、国道4号線沿線のインフラも完全に普及した。また、カオラック周辺の観光地だけではなく、漁村にも重機が入り始めて瓦礫の除去や整地が行われ、普及作業が着々と進んでいる。ただ、現在でもバーンムアン地区だけで1日2体〜4体の遺体があがっており、バーンムアン寺では大型コンテナ30数台に約1000体の遺体が冷蔵されている。

被災した住民の多くは、漁業(養殖業含む)や日雇い、観光地での仕事に従事していた人が多く、直接の被害を受けていなくても、観光地が被害に遭ったために仕事を失ったり、被災地の海で獲れた魚というだけで売れ行きが良くなかったりもしている。また、被災後のトラウマのため、海辺での生活に戻るのを恐れている人たちも多い。

今後、避難住民は仮設住宅に順次入居していくが、状況によっては「仮設」が仮設ではなくなってしまい、そのままそこに定住するということも考えられ、先の見通しが立ちにくい上に、安定した職業の確保など課題は多い。また多くの住民は、現在も避難生活を続けている状況にある。

パンガー県内でも津波被害の著しかったのがタクアパー郡バーンムアン地区ナムケム村である。この村の被災者を中心に、周辺地域で被害に遭った住民855家族約3450人がバーンムアン地区のオーボートー(地区の行政機関)に隣接する仮設避難所で避難生活をしている(1月20日現在)。救援物資は、当初よりも少ないながらもまだ届いているが、避難生活が長期化するにつれて食料品や日常品が足りなくなる可能性も示唆されている。ただ、古着などの衣類はかなりの量に及び、あちこちで山積みにされていた。そのため、避難住民の中には、着用した衣類が汚れたらそれを破棄して新しい衣類を求める人がいたり、集まった衣類の中から売れそうなものを回収している人もいたりする。

避難所での生活は、現段階では当会が提供した大型テント内で生活する人や小型テントで生活する人、そして「ワールドビジョン」や軍が提供した仮設住宅で生活する人などに分かれている。ただ、被災後すぐに提供された仮設住宅の多くは、トタン屋根に木製の長屋のため、熱がこもりやすい。避難住民からは「かなり暑い上に蚊が多く、扇風機や蚊帳を購入せざるをえない」という声もあった。現在、バーンムアン地区周辺に急ピッチで仮設住宅が建設されており、完成した仮設住宅から順次住民を入居させている。ただ、避難住民のなかには、周辺地域の仮設住宅(約8ヵ所)に入居することにより、物資や情報の集積地点であるオーボトー(地区の行政機関)へのアクセスや、現在、避難所内に様々な団体が仮設テントを立てて物心両面の支援を行っているが、その施設へのアクセスが困難になることを恐れている人たちも多く、仮設住宅が立地する位置によっては入居を拒む人もいる。

 

2.他の支援組織の状況:

バーンムアン地区の仮設避難所では、行政をはじめ国内外様々の団体が物心両面からの支援を行っている。一時期は100に及ぶ団体があったが、現在はタイ国内外の約80団体が避難所内で様々な活動−炊き出しや保健・医療、教育、情報提供などを行う団体から宗教色の強い団体まで−を行っている。

こどもや青少年を対象に教育分野での支援をしているのは現在9団体あり、SVA/SAFの他は、プラティープ財団やUNICEF、保健省、青少年のためのボランティアグループなどがあげられる。また、社会開発・人間の安全保障省が各避難所に「仮設保育所」を順次建てており、無料でのサービス提供も行っている。

 

3.事業の必要性

現在は大規模に物資や学用品などの配布をNGOが独自に行う段階は過ぎたと判断している。行政や援助組織によって満たされていないニーズとしては、被災児童の心のケアと街づくりをになう住民組織の復興であると考えている。

    被災児童の心のケアのニーズ

    約100名が両親を失って孤児となっている。避難所の子どもたちは、少なからず津波災害のトラウマを抱えている上に、避難生活の長期化に伴い、家族のストレスが子供に及ぼす影響も危惧される。子どもが安心していられる場所の提供を通じたストレスやトラウマの軽減が必要とされている。

    コミュニティ組織再建のニーズ

    住民組織である住民委員会のリーダーが死亡、被災した。今後、居住環境整備、漁業、観光産業の復興のために、住民委員会の復興、能力強化が必要である。また被災者の中には少数民族のモケーンやミャンマー(ビルマ)からの労働者などもいたことからこうした人びとへの支援をコミュニティベースで図っていく必要がある。

    モーケン民族、ミャンマーからの人びとの支援ニーズ

    水上生活者であるモーケン民族やミャンマーからの漁業労働者は、海岸沿いに居住していたため大きな被害を受けたにもかかわらず政府の支援が届きにくい人びとであるため支援のニーズが高い。

以上