申請年月日
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2005年 3月25日
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申請番号
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2005 −
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プロジェクト名
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スマトラ島沖地震被災者支援(緊急支援事業)
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実施事業名
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スマトラ島北部 アチェ州における被災民支援事業
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実施団体名
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特定非営利活動法人 ピース ウィンズ・ジャパン
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事業対象地状況
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【個別事業地毎被災者総数】
インドネシア国内全体では、死者125,736人、行方不明者94,322人、避難民(仮住所に住んでいる人)400,062人と発表されている。西部海岸のアチェ?バラット県では、死者9,668人、行方不明者1,240人、避難民71,647人と発表されている。ナガン?ラヤ県では、死者・行方不明者1,728人、避難民21,087人と発表されている。アチェ・ジャヤ県の詳細データ無し。
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根拠(3月8日付け、インドネシア政府発表、3月5日付け県政府の資料、国連人道情報センター、など) |
【〃 公共等施設損害状況】
基礎インフラ(道路・橋・学校・診療所など)および個人の住宅は、アチェ州の州都バンダアチェおよび西海岸沿い一帯においては、ほぼ壊滅的な損害を受けている。アチェ・バラットの対象4郡において1200軒の住居が全壊、268軒は半壊と549軒は軽い被害を受けた。ナガン・ラヤ県ダルル・マクムール郡においては、モスク6棟、祈祷所1棟、イスラム教学校2校、コーラン学習センター10軒が破壊され、同県クアラ郡においては、病院1棟、診療所6軒、モスク13棟、祈祷所5棟が全壊した。アチェ・ジャヤ県の詳細データ無し。
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根拠 |
【国際機関・援助団体対応状況】
スマトラ沖震災以降、340以上の国際機関、国際NGOがアチェ州にて人道支援に携わっている。
現在アチェ州における人道支援調整は、UNOCHAが国際機関、各援助団体全体の調整ミーティングを主催している他、各種セクターミーティングが開かれている。
インドネシア政府によると、3月26日にて緊急フェーズは終了であると1月に発表されたが、3月17日に公式に5月26日まで緊急フェーズが延長された。これを受け緊急支援のNGO、国連機関、および外国軍は5月26日以降に撤退することが予想される。今後の復興計画を定めたアクション?プランの発表も当初の3月26日の予定が延期され、いつ発表されるのかまだ不明である。
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根拠 |
【JPF2期事業展開に至る経緯】
弊団体は、被災直後からスマトラ島北部 ・アチェ州において緊急支援活動として、アチェ・バラット県、ナガン ・ラヤ県、など西海岸地域、及びアチェ州の州都であるバンダアチェ市で、主に生活支援物資の配給と瓦礫撤去作業による帰還促進事業を展開してきた。
しかし、余りにも甚大な被災状況ゆえにインドネシア政府の被災者支援政策に基づくアクション ・プラン(復興計画)の発表には時間がかかる見通しで被災地域の復興自体に遅れが生じており、結果的に被災民が不便な生活を余儀なくされている。
以上のように被災民支援の需要は依然として高いことから、弊団体も継続支援を決定し、今回の事業では特に長期化している被災民の生活を正常化することに焦点を置き、被災者キャンプへの配給活動等を継続するとともに、被災民の生活基盤の再建に通じる支援を行うこととした。
本計画の詳細は未定部分もあるが、その主な理由はインドネシア政府の政策に関係するところが大きい。インドネシア政府は3月26日をもってアチェ州の緊急フェーズを終了し、27日以降は復興フェーズに移行せよとの方針を明言してきたが、具体的なアチェ州の今後の復興計画の大枠を示したマスタープラン発表は4月あるいは5月中の予定であり、その中には、海岸線より2キロ(ムラボーでは500mといわれている)以内に家を建設してはいけないなど、国際機関、支援団体の今後の復興支援事業展開に大きく影響する内容が含まれるため、マスタープランの発表前に復興支援の計画を具体化することが、結果的に困難となっている。
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事業概要
(事業目的含む。)
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当事業では、緊急から復興への移行期における被災民支援として、フェーズ1および2で継続して事業を展開してきた西海岸地域のアチェ・バラット県、ナガン・ラヤ県、およびバンダアチェ市内で、被災者の帰還・再定住の促進を目的とし、以下の3つの事業展開を行う。
(1) 再定住・帰還支援(生活復興支援)
【事業の背景】
対象地域:(アチェ・バラット県ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡、州都バンダアチェ市)
・支援対象地域は、反政府勢力への支持が強い地域として知られているため、これまで政府による開発支援が遅れており、2003年の政府とアジア開発銀行(以下ADB)の地域調査によると、ウォイラ3郡の人口の37%、またアロンガン・ランバレック郡の人口の45%は貧困層に属することが分かる。また今回の災害によって、これまで職についていた人も失業を余技なくされ、更に貧困者数が増加する恐れがある。
・2003年の政府とADBによる地域調査によると、ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡における人口の98%、またアロンガン・ランバレック郡の人口の94%が農業従事者と報告され、今回の支援対象地域における被災民のほとんどが農業従事者であったことが分かる。また、PWJが独自に被災者への聞取り調査を行ったところ、彼らは被害を被った農地や道路など、農業を再開するための周辺環境の復旧を強く求めていることが分かった。
・バンダアチェ市ランバロスケップ地域は、海岸から約2.5キロ離れているものの、海岸とランバロスケップ地域の間には零細養殖所があるだけで他に津波の被害を緩和する建造物がなく、結果として甚大な被害を被った。被災直後は当該地域は泥と瓦礫の山になっていたが、JPF2での瓦礫の撤去作業支援がすすみ、道が開通するなど地域の復旧準備の目途が立つまでになっている。それを受け、被災者が元のコミュニティに帰還をし始め、4月初旬までに電気が復旧される予定である。しかしながら一方で、彼らの生活を支える仕事の場は依然として失われたままである。
事業目的
対象地域(アチェ・バラット県ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡、州都バンダアチェ市)において、被災により家族のみならず財産や収入源を失った被災者が、それまで従事していた農業や養殖業の復興支援によって、精神的に前向きに元の生活を取り戻すことを目指し、下記4つの再定住・帰還支援を行う。
1) 再定住・帰還支援
1−1.再定住地・帰還村や農業インフラの整備
1−2.農業投入財の配給
1−3.青年農業技術研修
1−4.零細養殖漁民支援
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【1−1.再定住地・帰還村や農業インフラの整備】
(対象地域:アロンガン・ランバレック郡、ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡)
政府指定の再定住予定地の整備や、津波を被った田畑の掘り返し、震災の被害に遭った道路や灌漑用水路の整備、操業停止となっているウォイラ郡の農製品加工所6箇所修復をCash for Workの事業形態にて実施し短期雇用を創出する。
また受益者による支援者側(PWJ)への過度な依存体質を招かないよう、各村においてのCFWの期間は原則1ヶ月以内とし、アロンガン・ランバレック郡、ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡において村長と各キャンプリーダーとのコーディネートの元、作業日程を組んでいる。詳細スケジュールは添付資料3を参照されたい。
当該事業ではCash For Workによる現金収入により被災者が生活力を回復することを基盤としているが、特に今回の災害により操業停止となっているウォイラ郡の農製品加工所6箇所の修復を活動に取り入れたのは、地元の強い要望が反映されており、地域経済の復興にも大きく貢献することを視野に入れている。
また原則としてCFWの参加者は1家族1名とし、日当は350円を支給する。350円のうち50円はランチを準備する調理者にPWJから直接に渡る。この調理者は未亡人、あるいは職を失った世帯の女性の雇用を予定し同様に日当300円を支払う。
尚、CFWが終了する村で、引き続き下記「1−2.農業投入財の配給」事業を行うため、被災者は職を失うことなく、自立への自助努力に取組むことができる。本事業の受益者は1,155人(添付資料3参照)とし、執行体制としては、プロジェクト・マネージャー1名(当該マネージャーは西部海岸地区における女性支援も管轄)、プロジェクト担当者2名、プロジェクトアシスタント4名、合計7名の体制を充当する。
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【1−2農業投入財の配給】
(対象地域:ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡)
事業背景の説明でも触れたが、当該地域の被災民の殆どは農民で、彼らの生活基盤である農業の再開を可能にするため、農業用資機材および種子、肥料、農薬の配給を行う。豊かな農業経験を持ち合わせている被災農民は、自分の土地、あるいはホスト・コミュニティーの土地の利用が可能なため、農具の配給によって自立した生活を開始できると見込んでいる。また避難生活を送っている被災者においても、彼らが被災する以前に住んでいた村へ戻る、あるいは再定住する際に、当該事業で配給された農業投入財を利用して農業の再開が可能となることを目指す。
本事業では、緊急フェーズから復興フェーズへとスムーズに移行できるように、JPF2また前述「1-1.再定住・帰還村やインフラの整備」のCash for Work参加者を、農業投入財の配給の主な受益者とする。尚、Cash for Workを通して、既にスコップや鍬などの農具を受け取っている受益者には、それ以外の種子、肥料、農薬を配給する。
支援対象村は、JPF2において既にNFI配給とCash for Workで支援した45村(1296世帯)に加え、PWJの調査を踏まえ、各郡長と相談して選んだ12村(348世帯)、また連日ムラボー事務所に支援の要請が寄せられ続けている支援の届いていない被災者250世帯を想定し、合計1894世帯の支援を行う(添付資料4参照)。実施にあたっては、すでにJPF2で着手している事業受益者への支援が主となることを考慮し、これまでの活動経験のあるプロジェクト担当1名、プロジェクトアシスタント1名の計2名で事業運営を行う。4月中旬までに物資調達を行い、それ以降順次配給を行う。
【1−3青年農業技術研修】
(対象地域:アチェ・バラット県下ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡)
ウォイラ郡、アロンガン郡周辺は、被災前は反政府勢力が非常に強かった地域であるが、今回の被災によって反政府勢力とインドネシア政府間の和平交渉再開のきっかけとなっている。当該地域は鶏と山羊の消費量が高く、特に養鶏・牧畜のニーズが高いことから、被災民が地域に再定住し生活を再建することを目指し、18歳から28歳の被災青少年160名を対象に、農業・牧畜・養鶏の職業訓練を行う。
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第1週
(土日月)
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第1週
(火水木)
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第2週
(土日月)
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第2週
(火水木)
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第3週
(土日月)
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第3週
(火水木)
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第4週
(土日月)
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第4週
(火水木)
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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農業 ク ラ ス?
20名
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養鶏 ク ラ ス
20名
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牧畜 ク ラ ズ
20名
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養鶏 ク ラ ス
20名
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牧畜 グ ラ ス
20名
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養鶏 グ ラ ス
20名
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牧畜 ク ラ ス
20名
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養鶏 ク ラ ス
20名
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牧畜 ク ラ ス
20名
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また、人員配置は下記のとおりとする。
・農業 ク ラ ス:研修生〔グループ1(40名)、グループ2(40名)〕、講師1名、アシスタント講師4名
・養鶏 ク ラ ス:研修生〔グループ1(20名)、グループ2(20名)〕、講師1名、アシスタント講師2名
・牧畜 ク ラ ス:研修生〔グループ1(20名)、グループ2(20名)〕、講師1名、アシスタント講師2名
尚、当該研修終了後には農業資機材、鶏、山羊の供与を予定しており、研修生が元のコミュニティに戻り、スムーズに研修で得た知識を実践に移すための一助とする。
現地執行体制としてはムラボー事務所のプロジェクト・マネージャー1名、プロジェクト担当2名、プロジェクトアシスタント2名をあてて業務を遂行する。
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【1−4零細養殖漁民支援】
(対象地域:州都バンダアチェ)
震災以前、バンダアチェ市ランバロスケップ地域の40%の住民は小規模養殖にて生計を立てていたが、津波によって養殖池は塩泥によって覆われ、魚が全滅してしまった。このために、養殖池が復旧されない限り、被災者の再就業に全く見通しが立たない状況である。最近まで瓦礫撤去作業によってランバロスケップ地域を支援してきたPWJにとって、復興への第一歩として当該地域の再建にとって不可欠な零細養殖業を支援することが、現段階において最も必要とされる。被災した養殖池の再建にむけて、4月にはバンダアチェにある国立シャクアラ大学の水産養殖専門家による池の水質・土壌調査を行い、その調査に基づいた計画を立てて、当該地域50世帯が依拠していた養殖池の復旧を行う。同専門家による、養殖池の復旧直後の留意点を含めた養殖業に関する研修も実施する。復旧作業にあたる人員は、震災以前に養殖で生計を立てていた当該地域の被災者20世帯をあてることとし、作業期間としては先述の調査結果に基づいて最終的な計画を確定することとなるが、現状では2ヶ月間の作業を予定している。養殖池の復旧後には、養殖漁民50世帯を対象に操業再開に必要な漁具を配布して、漁民の生活基盤を整備する。
事業の執行にあたっては、バンダアチェ事務所のプロジェクト・マネージャー1名(プロジェクト・マネージャーはバンダアチェにおける生活必需物資配給も管轄する)、プロジェクト担当者1名、プロジェクトアシスタント1名、合計3名の体制で実施する。
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(2) 女性支援(生活復興支援)
a) 対象地域:アチェ・バラット県、ナガン・ラヤ県
西部海岸の二県、アチェ・バラット県及びナガン・ラヤ県においてPWJが地元のNGOであるKalyanamitraとMeulaboh Crisis Center(MCC)と協力して事業を実施する。事業の裨益者は下記の10村に居住する17歳から55歳までの約420名(28グループ・各15名)の女性である。
県名
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郡名
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村落名
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総人口(女性)
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17歳〜55歳までの女性の数
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アチェ・バラット
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ジョハン・パラワン
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クルラハン・スアク・リベー
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180(75)
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42
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サマティガ
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チョッ・ダラット
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839(405)
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251
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ブボン
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グノン・パナ
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221(112)
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62
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ブボン
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スアク・パンカット
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45(23)
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16
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ウォイラ・バラット
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ブラン・ルア
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125(66)
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38
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ウォイラ・バラット
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チョッ・ランボン
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91(42)
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28
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ナガン・ラヤ
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クアラ
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スアク・プントン
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680(315)
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177
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クアラ
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クアラ・トラン
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155(77)
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53
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クアラ
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クアラ・タドゥ
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379(162)
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111
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ダルル・マクムール
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ブラン・バロ
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242(125)
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93
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合計
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2,832(1,336)
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833
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アチェ州における被災民の50%は心理的なケアが必要な状態であると言われているが、特に女性(未亡人含む)など社会的弱者に対しての支援は、充分に行き渡っているとは言えない。そこで西海岸2県において、女性を対象に収入向上と心理ケアを組み合わせた事業を実施することにより、被災コミュニティーにおける社会的弱者支援に貢献する。
MCCより10名ファシリテーターを選別・動員し、心のケア、収入向上(会計管理含む)などについての基礎的な研修を、期間を7日間として実施する。まず、MCCのスタッフの中から適切なファシリテーターを選択するためにKalyanamitraの心理学専門家が面接やグループディスカッションを行う。その後、対象地域の女性833名を、当該事業への参加意志を確認しながら、1ヶ月かけ28のグループ(各15名程度)に編成し、2ヶ月間でグループがそれぞれ独自の活動を行っていく。この過程における地域女性の参加率は約50%前後と想定している(416名前後)。この裨益者数の規模に対応して、一人のファシリテーターが約3グループを担当することによって個々のグループの活動を適切に管理できるという判断の下にファシリテーターの数を10名とした。参加者15名程度を目安として構成されるそれぞれのグループによって異なる活動内容は全部で14種類に達するが、ケーキ・クラッカー作り、裁縫、ミシン刺繍、手刺繍、西瓜栽培など多岐にわたる。これらの活動はニーズ調査の過程で各村の参加希望者との協議の上で決定した。地域住民の中に、ある程度のスキルを持っている人がいることが、特定の活動を選んだ主たる理由である。さらに考慮した点は、日本と同じようにアチェにおいても地域の特産品あるいは地域色の高い民芸品があるので、トレーニングやマーケティングが比較的できる活動を選択した。各グループにおける活動は以下のように整理される。
・ クルラハン・スアク・リベー村:西瓜栽培(1グループ)、裁縫(1グループ)
・ チョッ・ダラット村:養鶏(2グループ)、薬草栽培(2グループ)、伝統タバコ製作(2グループ)
・ グノン・パナ村:裁縫(3グループ)
・ スアク・パンカット村:裁縫(1グループ)
・ ブラン・ルア村:伝統的菓子(ベーカリー・ケーキ)の製作(1グループ)、裁縫(1グループ)
・ チョッ・ランボン村:裁縫(1グループ)、
・ スアク・プントン村:ミシン刺繍(1グループ)、手刺繍(1グループ)、ドライ・バナナ製作(1グループ)、代替作物栽培(1グループ)
・ クアラ・トラン村:裁縫(2グループ)、傘製作(1グループ)、敷物製作(1グループ)
・ クアラ・タドゥ村:ヤシ油生産(1グループ)、クラッカー製作(1グループ)、裁縫(1グループ)
・ ブラン・バロ村:裁縫(1グループ)、伝統的菓子(ベーカリー・ケーキ)の製作(1グループ)
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上記活動を通して収入向上のみではなく、被災女性たちが集まって話をし、共通の目的を持った活動をする機会を提供することにより、心理的トラウマに対するケアも試みる。ケアは主に4つの方法を使用する。
i) サポート・グループ方法:この方法においてグループが津波の経験・感情・恐怖などをシェアするための媒体になる。そのプロセスを通じてグループ内の信頼関係が強くなり、生存者の孤独感が消えていく。
ii) 心理教育の方法:分かりやすい心理学情報の配布により、被害者が自分の抱えているトラウマを理解し、少しでも乗り越えやすくなる。
iii) 行動療法:トラウマを起こした経験を安全な環境において演ずることで、トラウマ状態を緩和していく。
iv) ゲーム:自信と信頼の醸成、感情の表現などのためにゲームを行う。
上述の活動内容選定の過程において、PWJと協力関係にあるKalyanamitraとMeulaboh Crisis Centreは2月に綿密な調査を行った。調査の中でKalyanamitraとMeulaboh Crisis Centreが被災女性に対し、どのようなスキルを持っているかという点を中心にインタビューした。各グループにおいて既にスキルを持つ人がいる場合もあるが、そのスキルの程度には大きなばらつきがある。訓練に関してはまず当該地域コミュニティの中から経験豊かな人を選んで基本的なトレーニングを行う。その後、グループ内のある程度の経験を持つ人が他のメンバーを一緒に仕事しながら、指導していく。まず、グループ外のトレーナーが一週間、集中的トレーニングを実施する。その後の3週間は、週に一回グループを訪問して、問題点の有無を確認し、必要であればアドバイスを与える。対象村が選択された理由は、その村内のキャンプにおいてはある程度のスキルを持つ女性が存在し、中心が存在することによってグループの統一感が強まる可能性が高いと判断したからである。
以上に概観したような活動の執行体制としては、Kalyanamitraの心理学専門家(コミュニティ・ソーシャル・ワーカー)2名、MCCのファシリテーター10名、合計12名の体制で実施する。
b) (対象地域:州都バンダアチェ市)
バンダ・アチェ市内のランバロスケップ村において、夫、子供、親を失った女性は少なくない。そうした女性たちを含めて、一般的に女性たちの中では自分の生活を再建するためには働きたい意志が強く見受けられる。さらに、夫が生存していても仕事がなく、人道援助が終わったらどうなるのかと心配している女性は数多い。ニーズ調査の過程において、ランバロスケップ村の女性の中で、災害前に刺繍、裁縫、お菓子作り、キオスクやカフェなどの経営により生計を立てていた個人やグループを選定することができた。現在その被害者の女性たちの多くは、いくら津波により、職業関連の財産、道具や材料を失っても、スキル、努力や勤勉さはなくならない、と気丈に述べている。この値踏みのできない意向を支持するために、PWJは材料や道具を女性たちに提供する。現状においては、新しいスキルを教えるよりも、事業の短期的効果を得るためには、裁縫、刺繍やお菓子作りに関して、既にあるスキルを一週間の集中的なトレーニングでアップグレードすることが有効である。トレーニングは村長宅にて実施する。
トレーニングが終わったら、道具、材料などを買うためには初期的資本が必要であるので、PWJが返済期間1年間のローンを提供する予定であるが、この部分は自己資金を充当する。返済は毎月の1日とし、毎月0.5%の利子を付けるが、その利子はPWJではなく、グループ貯金口座に入る。グループ貯金でグループとしてマーケティング活動、市場あるいは祭りの出展や共同使用の機械の購入などができる。
会計担当者がすべての収支を通帳とグループの会計書に記録し、メンバーに報告する予定である。ローンの返済はリーダーと経理担当によってPWJの銀行口座でやる。モニタリングやフィードバックを得るためにはPWJスタッフが毎月グループミーティングを行う。
裨益者は、先行事業において瓦礫除去事業の裨益者となっていたランバロスケップ村の世帯を中心に、震災前に営んでいた生業・スキルに基づいて選定してある。グループ毎の活動は以下のように整理できる。
・ 裁縫(学校の制服の製作):10グループ・150名
・ ミシン刺繍:1グループ・15名
・ ベーカリー、ケーキ製作:2グループ・30名
・ 雑貨店(キオスク):15世帯・75名
・ カフェ:15世帯・75名
裨益者総数 345名
実施過程において、PWJがグループ間の協力も促進する。グループが提携することで更に利益があがる可能性がある。PWJができることの例としては、カフェのグループがお菓子作りのグループからお菓子を注文することによって、両者が利益を得る。もう1つの例は、裁縫グループが洋服を作るとき、胸のポケットに飾りとして刺繍でできたデザインを刺繍グループに頼むことなどが挙げられる。人員配置は、プロジェクト担当1名、プロジェクトアシスタント1名の2名体制とする。
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(3) 生活必要物資の配給
(対象地域:ウォイラ郡、アロンガン郡、州都バンダアチェ市内)
【事業背景】
本事業に先行するJPF事業において(事業期間:1月11日〜3月26日)、PWJは生活支援物資の配給を実施してきた。この先行事業における物資配給は終了し、支出額も予算額にほぼ達する予定である。先行事業においては当初計画からの大きな変更が生じたが、その理由として、配給物資の内容ならびに配給の場所が、毎日のように行なわれる調整会議において各援助機関がそれぞれのニーズ調査の結果を報告しつつ、また被災地コミュニティからの苦情などを吸い上げながら、合意に達した役割分担の結果としてしか決定できない、という支援対象地域の状況が挙げられえる。特に支援の届きにくい地域を対象とする物資配給の場合、このような状況が継続すると考えられる。
先行事業におけるNFI配給支援対象者に対しPWJが行った実態調査で、道路から離れた奥地では今でも援助が一切届けられていない避難者の存在が確認されている。特にアチェ・バラット県では仮設住宅が一軒も建設されていないことから、大半の被災者は親戚の家に身を寄せているか、不自由なテント暮らしをしている。またPWJのムラボー事務所には、被災キャンプの代表者や援助の届かない村の村長から、連日のように支援要請書が提出されている。こういったことからこれまで確認できている支援の届けられていない被災者に対し、物資配給を継続する必要がある。ただし、支援物資の行き届いていない場所というのは、正確に特定されていない上に、援助機関が日常的に受け取る苦情や要請の中から不定期に浮上してくるものであり、逆に言うと正確に特定されているのであれば、既に物資の配給対象になっているはずである。したがって、当該事業においては企画立案段階における事業対象地域の詳細な特定は困難であり、物資の明細についても大枠を決めることはできても、事業実施過程の中で浮上してくる特殊なニーズに対応することを前提すると、詳細部分を確定することは困難である。
【事業内容】
言うまでもないが、被災直後の時期と比較すると、被災地域全体の状況としては、緊急事態を脱しつつある。しかしながら、前述のように、衛生用品、台所用品、衣類などの生活必需物資の配給に関しては、それほど数が多いわけではないが、配給の盲点となっているような場所が存在している。したがって、従来の配給活動が十分にカヴァーしきれていない地域に対して、石鹸やタオルなどの日用品の配給を実施することは現時点においても緊急性が高いと言える。裨益者は、避難生活が長期化しているキャンプ住民、被災村落に帰還した被災民、Host Communityに避難している被災民として分類することができるが、特に未亡人・障害者・孤児など社会的弱者に対してはそれぞれの個別ニーズに対応した物資を配給していく。以上のような、今まで支援が届いていない地域に対する支援を木目細かく実施していこうという問題意識は、援助コミュニティの中でも共有されつつあり、当該事業の実施においても、国連機関や国際NGOと、配給物資や配布地域・対象者選定方法などについて調整することが必要になる。こうした調整によって、地域毎あるいは団体毎のばらつきがないように配慮する。配給開始後にも村長や被災民のリーダーとの協力のもと、丁寧なアセスメントを行い、提供物資の内容や量を調整する。
以上のような事業の執行体制としては、ムラボー近郊の2郡において、プロジェクト担当1名、プロジェクトアシスタント1名、合計2名の体制で事業を実施する。バンダアチェにおいては、プロジェクト担当1名、プロジェクトアシスタント2名の3名体制とする。
当該支援の受益者については、先述した理由により事業実施前に確定することが困難であり、最終的には援助コミュニティ内部での協議・調整の結果確定することとなるが、ムラボーにおいては300世帯、1,650人、バンダ・アチェについては700世帯、3,850人を予定している。
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事業期間
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2005年 3月 27日 〜 2005年 6月 30日(96日間)
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裨益者計
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18,382人(スマトラ沖震災被災者)
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事業内容(地図添付)
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地域名
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計画数値
(何をどれだけ)
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裨益者
*1世帯5.5人で計算
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事業費
(直接経費)
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備考
(積算根拠)
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ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、アロンガン・ランバレック郡
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1-1. 再定住地・帰還村や農業インフラの整備
清掃用具200セット
小規模加工所6箇所
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1,155人
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26,943,684円
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事業別資器材明細参照
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ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡
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1-2.農業投入財の配給
農機具 598セット
種子・堆肥・農薬 1894セット
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10,417人
(1894世帯)
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ウォイラ郡、ウォイラ・バラット郡、ウォイラ・ティモール郡、アロンガン・ランバレック郡
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1-3.青少年農業研修
農業研修2ヶ月X1回(80人)
養鶏研修2ヶ月X1回(40人)
牧畜研修2ヶ月X1回(40人)
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160人
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州都バンダアチェ市
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1-4.零細養殖漁民支援
養殖池 1箇所
漁具 50セット
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385人
(70世帯)
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アチェ・バラット県
ナガン・ラヤ県
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2.被災女性支援
14種の研修X各1回
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420人
(15名X28 ク ゛ ル ー フ) ゜
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3,807,832円
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事業別資器材明細参照
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州都バンダアチェ市
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2.被災女性支援
5種の研修×各1回
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345人
(15名×13グループ、75世帯2グループ150名)
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1,478,056円
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事業別資機材明細参照
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ウォイラ郡、
アロンガン郡、
州都バンダアチェ市
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3.生活必要物資の配給
台所道具X1000
衛生用品X1000
衣類・ランプ等X1000
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5,500人
(1000世帯)
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7,000,000円
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事業別資器材明細参照
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合計
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39,229,572円
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執行体制状況
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1. 現地執行体制
バンダアチェ事務所は、スマトラ事業の総括を担い、資機材の購入、国際機関、国際NGO、インドネシア政府機関との連絡調整の拠点であると同時に、バンダアチェ事業の運営管理も行う。(14人体制)
ムラボー事務所は、アロンガン郡およびウォイラ郡における事業の実施・モニタリングを行うための拠点となる。またムラボーは西海岸4県の国際支援のコーディネーション拠点でもあることから、西海岸にて支援を実施している国連機関、インドネシア政府、NGOとの連絡調整の拠点としても機能する。(37人体制)
[国際スタッフ] 現地駐在代表は主にバンダアチェとムラボーを往来しながら業務に従事し、国際機関 ・各種支援団体との調整、情報の収集に当たるとともに事業運営全体を管理する。会計庶務はスマトラ事業全体の経理全般を担当し、事業コーディネーターはそれぞれバンダアチェとムラボーにて事業実施・モニタリングを管轄する。
必要に応じて、メダンやジャカルタにスタッフを派遣し、物資の調達やスタッフの移動に関するサポート、およびインドネシア政府との連絡調整を行う。
2.国外連絡先との連携
国連および国際NGOとは、UNOCHAの主管する調整会議などを中心に、支援場所、支援内容など話し合い、支援の重複などがないよう調整する。
農業支援については、FAOの技術協力および支援調整の下で支援を実施する。同様に、生活物資配給においてはUNHCRと連絡を取る体制とする。また、地元のNGOであるKalyanamitra及びMCCとは西海岸における女性支援事業実施において協力する。
インドネシア政府とは、UN経由あるいは直接連絡を取り合い、事業の報告、支援の調整などを行う。
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人役計
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従事業務
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事業費(人件費)
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本部人役(東京)
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3人役
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事業統括、事業連絡調整、会計
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2,700,000円
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現地人役計
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54人役
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6,346,000円
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国際スタッフ人役
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3人役
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事業実施・モニタリング、連絡調整、会計庶務
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2,880,000円
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現地雇用人役
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51人役
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事業担当およびアシスタント、会計、警備員など
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3,466,000円
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合 計
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9,067,000円
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国外連携先
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団体名称
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連携状況(具体的にどのような連携なのか記述)
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NGO
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Kalianamitra
Meulaboh Crisis Centre (MCC)
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西海岸における女性支援の事業実施協力
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現地行政府
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インドネシア政府
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報告など
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国際機関
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FAO
UNHCR
UNDP
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農業に関する支援内容調整のアチェ州全体の担当
生活物資配給事業のアチェ州全体の調整担当
Livelihood(女性支援など)の支援内容調整担当
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総事業費
(詳細設計は別紙)
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65,218,035円
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財源状況(自己財源: 0円、JPF財源:65,218,035円 )
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※事業費(直接経費)/総事業費 〜 ( )
※事業費(人件費)/総事業費 〜 ( )
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事業スケジュール
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4月
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5月
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6月
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7月
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共通
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・支援計画の詳細策定
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・監査
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・報告書
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基幹産業復興
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・1-1 再定住地・帰還村や農業インフラの整備
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・1-2農業投入財の配給
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・1-3 青年農業技術研修
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・1-4 零細養殖漁民支援
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女性支援
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・被災女性のグループ化
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・収入向上等の研修
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生活用品の配給
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