[2]調査結果 〈2〉現地調査NGOの活動状況 |
│難民を助ける会-AAR-│BHNテレコム支援協議会│ピースウィンズ・ジャパン-PWJ-│ │セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン-SCJ-│JEN│日本医療救援機構-MeRU-│ |
〈3〉ピース ウィンズ・ジャパン -PWJ- | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◆団体名:特定非営利活動法人 ピースウィンズ・ジャパン ◆プロジェクト:アフガニスタン国内のアフガニスタン被災民・避難民に対する緊急支援及び越冬支援事業 ◆期間:2001年09月28日〜2002年02月28日 ◆地域:アフガニスタン国 サリプル州 ◆実施責任者:大西健丞 ◆現地インタビュー:根木MR(カブール)、宮下MR、山内MR(マザリシャリフ・サリプル) ◆プロジェクトの体制:事務所…イスラマバード、カブール、マザーリシャリフ、サリプル ◆人員:日本人スタッフ…5名、各事務所に1名総括者1名 ◆現地スタッフ…23名受益者、サリプル州国内避難民約6000家族(約30,000人) ◆パートナー協力団体:CoAR、CRS、DFID、UNICEF、UNOCHA、WFP ◆プロジェクト概要 a)10月よりイスラマバード事務所を開設。空爆中も日本人スタッフをおき難民流出に備えていたが、空爆が開始されてからもパキスタンへの難民は国境閉鎖があり公式にはあまり入国できない状態が続いた。 b)車輌については免税措置のためのNGO登録、通関作業、アフガニスタンへの搬入作業を実施。パキスタン政府・アフガニスタン暫定政府ならびに国境税関等の手続きに多くの労力と時間がかかった。最終的には無税通関、アフガニスタン搬入に成功。無線は許可書取得・在庫逼迫・搭載する車輌の遅れ等の影響により時間を要した。 c)アフガニスタン空爆の発生後アフガニスタン国内避難民支援に方針を切り替え、11月よりアフガニスタン内での活動を開始すべく現地NGOであるCoARとパートナーシップを締結した。11月から12月にかけて、アフガニスタン入りすることができなかったPWJに代わりCoARがサリプル州の国内避難民キャンプにおいて避難民登録作業を実施 d)避難民再登録 テント配布後キャンプにおけるテントの使用状況について調査を実施。11月にCoARが登録した避難民数と実際に使用されているテント数に食い違いがあることが判明。(登録されカードを配布されたにも関わらず、米の配布の際に召集されたカードを配布後返還されなかった、したがってテントの配給を受けることができなかった家族がいたため)11月のCoARによる登録の際にはパシュトン系(千数百家族)が登録対象から完全に排除されていたことが判明。1月、これらの家族を対象に再登録の作業を実施。 e)11月27日、日本人スタッフカブール入り。12月初旬にはマザリシャリフ入り。12月末、カブール事務所立ち上げ1月初め、マザリシャリフ事務所立ち上げ。2月初旬、サリプル事務所立ち上げ。 f)テントの調達・輸送 テントについてはパキスタン内において調達。10月より12月中旬にかけテントをアフガニスタンへ輸送準備。輸送中のリスクを分散するため、以下のとおり4つの経路に分けてテントを輸送。 ※搬入経路1 ・ジャパン・プラットフォーム資金によるテント3,000張陸路 ・イスラマバード(12月18日)→ペシャワール(12月21日)→ジャララバード→カブール(12月24日)→サリプル(12月31日、1月1日) ※搬入経路2 ・ジャパン・プラットフォーム資金によるテント2000張 ・パキスタン航空空路・搬入(12月16日) ・イスラマバード(12月17・18日)→アシュカバッド(同日) ・民間会社陸路アシュカバッド→トルクメナバード→アンコイ→サリプル(12月25・26・29日) ※搬入経由3 ・CRS(寄贈団体)テント250張陸路:ペシャワール→イスラマバード空港(CRS) ・UNフライト空路:イスラマバード空港→マザール(12月23日) ・陸路民間会社:マザール→サリプル(12月25日) ※搬入経路4 ・CRSテント750張陸路:ペシャワール→ナンガハール→カブール→サラン・トンネル→マザール→サリプル(2月1日)(CRSによる独自アレンジΔテントの配布上記の通りテントを輸送中、テントを積んだトラックの一部が横転する事故があり。) g)キャンプにおけるテントならびにその他の物資の配布 12月31日より1月4日にかけてサリプル国内避難民キャンプの4,240家族に対しテントを配布。 米の配布12月中、UN配給の食糧が遅れていたため、現地で米42.4MTを調達し、キャンプの避難民4,240家族に配給。再登録者後はキャンプ内の避難民登録者は5,613家族対象。 ◆サリプル国内避難民キャンプ用物資配布
◆サリプル国内避難民キャンプにて配布が終了した物資リスト配布物
◆テント以外の物資配布について 一通り登録者にテントを配布し終えた1月中旬、避難民キャンプのそばに突然、別のキャンプが出現し、物資配給を求める人が押し寄せた。これは避難民キャンプが町に近いところにあるため、町の住人が避難民を装って配給物を受け取ろうと臨時にキャンプを形成したものである。混乱を避けるため予定されていた食糧及びその他の生活物資の配給を一時停止した。町からキャンプに人が流れてくるのは町での物資配給を担当している団体の活動が遅れているためであった。町での活動が開始されれば偽難民は減ると予想された。 サリプル州で支援活動を行っているNGOグループは、町から流れてきた住民に対して説明会を開き、UN及びNGOの物資配給計画を伝え理解を求めた。 その結果、町の住民の流入は収まり、1月28日にWFPの小麦の第一回目配給を開始した。 国内避難民キャンプにおいては引き続きWFPの食糧及び補助食糧を配布する。 食糧以外の物資(日用品、衣料品、ストーブ、チャコール、毛布等)については、今後村へ帰還する避難民が帰還する際に配布する予定である。 ◆サリプル州内の支援活動におけるコーディネーション PWJは、UNOCHAとの合意によりleading agencyとして、サリプル州各地で活動をしているNGO全てのコーディネーションを任されている。 具体的には、各NGO間の調整、UNOCHAへの各NGOの活動報告、他のUN機関や地元の軍・治安当局との交渉・調整を行なっている。NGO間の調整として毎月一回調整会合を開催している。また、地元の軍司令官がキャンプの立ち退きの圧力をかけてきた際には、キャンプの移動は事実上非常に困難である旨を軍関係者に伝え、キャンプの立ち退きを春まで延期する約束を取り付けた。 ◆復興にむけて カブール・サリプルにおける学校復旧への取り組み ピースウィンズ・ジャパンは学校復旧として学校修復にすでに取り組んでいた。カブールにおいてはカブール事務所がISAF建設部隊ならびに教育省の調整会議において支援候補校をあげ調整後作業に取り掛かる。ピースウィンズ・ジャパンは行政サービスの届かないハザラ地区の学校修復に取り組んでいた。屋根・壁・窓枠の修復、学校備品(机、椅子 教育省の基準あり)更新、衛生設備の改修等の作業をローカルの人々が作業していた。 またサリプルでは学校登録現場でジャパン・プラットフォーム資金と企業協力で開発・提供されたバルーンシェルターを設置し、学校の登録作業が行われ、ここでも屋根・壁・窓枠の修復が行われており、さらに郊外の学校の修復も予定されていた。 カブール・サリプルどちらにおいても、就学意欲は高く、5年程度の空白もあり収容数を上回る登録者があり校舎の増設も急務である。 今後教育復興については、平和構築の礎として日本のNGOの活動が期待される分野であり、日本のNGOも現地行政・コミュニティと協力し作業を行っていく。 ◆考察 a)ローカルスタッフ プロジェクトの実施には優秀なローカルスタッフの確保と育成が必要である。NGOとしての志、語学力、事務処理能力にくわえ採用時に不偏不党性を確保するためバックグラウンドチェックを行うことも重要である。賃金高騰を防ぐためのNGO間の合意、他の団体の給与水準を参考に給与は決定されている。採用後はPCの利用、書類管理、契約等の業務をOJTで教えていく必要があるが、NGOの重要な役割として現地での雇用の創出と現地へのノウハウのトランスファーがある。ピースウィンズ・ジャパンのような大規模プロジェクトにおいてはローカルスタッフの協力が不可欠である。 b)地元NGOの質とキャパシティ・ビルディング よきパートナーとしてローカルNGOとの関係を築いていくことは、持続的な支援には不可欠である。PWJのパートナーCoARに依頼した登録作業においてもモニタリングの結果一部不備がわかったように、日本のNGOによる品質管理がもとめられる。地元NGOのキャパシティ・ビルディングとして捉え、新しい仕事を依頼する場合は作業手順等を指導していく等具体的に関与することが重要である。 c)コーディネーターとしての仕事 UNUNOCHAは北部地域の調整機関の仕事を担っており、PWJをサリプル州のコーディネーターに指名している。PWJはUNOCHAと協力し、他のUN機関、現地行政機関、中央出先行政機関、国際NGO、地元NGOとの調整会議を実施している。これらのコーディネーションは緊急時においてもまた復興・開発においても重要である。 日本のNGOも積極的に同様な会議に出席し、適切な支援プログラムを行うことが必要となる。ただし会議への出席、各団体の調整と負荷がかかることから相応の人員の手当てが必要である。 d)キャンプ運営上の難しさ 数万人の規模にのぼるキャンプ運営はキャンプ内の自立的な避難民コミュニティの意思決定機関との連携が不可欠でありPWJも現場でキャンプの避難民代表との会議を頻繁に行っていた。 またキャンプの恒常化をさけるためには帰還を適切な時期に行う必要がある。このためキャンプでの配布についても慎重な対応が必要である。またキャンプと周辺のコミュニティの関係についても周辺コミュニティに対し影響を与えないよう注意しなければならない。経済的な影響を食い止めるためにも帰還は不可欠な作業である。 e)安全策 安全対策についてはUNのセキュリティミーティング等の出席や現地スタッフ等からの情報等恒常的に情報収集を行い、全てのスタッフに緊急時の対応を徹底させる必要がある。PWJは独自の退避計画をもっている。 また無線についてはUNや他の国際NGOとの安全情報の共有、緊急時の通報等から不可欠な設備である。車輌についても、現地の道路事情から整備状況のよい四駆やトラックをもつことが安全にもつながると考えられる。活動中の車輌故障を想定すると遠出する場合は複数車輌での運行か、無線設備があることが望ましい。(PWJは遠出の場合複数車輌での運行を安全規定として定めている。) f)通信インフラ カブールをふくめアフガニスタン諸都市では電話事情が悪く、外部との通信は衛星電話に依存することが多い。ただ音声通信については無線による連絡網を構築することがもっとも有効であると考えられる。 g)送金手続・為替、現地会計 現地会計は本部から総務会計スタッフを送り込んでいるが、各事務所では単式簿記による必要現金の管理、月次締めによる本部への報告を行なっている。PWJでは各項目の振替は現地で行い、証憑帳票については現地において番号付けを行い管理している。緊急時はこれで充分であるが、将来持続的な支援を行う場合は現地事務所と本部との締めが同時に行われるよう、現地での複式簿記の採用等の対応が必要となろう。 h)バルーンシェルターの活用 ジャパン・プラットフォームの供与資金によって購入されたバルーンシェルターが現地にもちこまれ、キャンプでの登録、物資配布時、学校登録時に適宜展開され使用されている。本バルーンシェルターは反復利用が可能であり、かつ随時仮設施設を短時間(1時間)程度で展開可能であることから今後自然災害や難民支援の現場での再利用が期待できる。 i)煩雑な手続業務 PWJはイスラマバード、カブール等にも現地事務所をもち充実した現地ロジ体制をしいている。現地ロジは各省庁の手続、業者との契約交渉等にくわえ通行許可書の取得、UN機等の手配等多岐にわたる。ロジ体制が貧弱であればプロジェクトの推進に影響がでることは明白である。 j)復興支援への連携 PWJの緊急支援活動は復興支援へとつなげる過程にある。復興支援はロジがさらに延長するとともに、より困難な地域を広範囲に抱えることとなる。持続的な支援体制に転換することが課題となる。PWJはUNや現地政府との調整のうえで道路修復(サリプル)、学校修復(サリプル・カブール)農業支援(サリプル)等の復興支援計画をたてている。これらは外国政府からの資金提供もうけているものもあり、ジャパン・プラットフォームの初動立上の実績が評価されたことと、初動体制で購入した車輌等が今後も有効に使われることを示している。UNからは今後セクター別の支援からより総合的な地域別のプログラムが期待されており、現在の足場をいかして今後数年以上現地復興に寄与することが求められている。スタッフも専門性の高い人材を本部もしくはローカルで手当てする必要がある。 ◆ジャパン・プラットフォームとの関係 ジャパン・プラットフォームの政府資金供与により初動の段階でまとまった資金が使用できことにより、テントの調達、事務所の立ち上げを迅速に行うことができ結果として早い段階で越冬テントを避難民に配布することができた。 ピースウィンズ・ジャパンは政府資金を背景にジャパン・プラットフォームの一員としてアフガニスタン北部にテロ以前から現地入りし調査を行い支援のオペレーションが始まる前から支援に関する情報をいち早く入手した。 テロ直後の9月の段階でUNから支援活動への参加の打診があり、支援活動の役割分担を決める段階から支援に関心ある旨を伝え、まとまった資金が供与されているため支援活動の役割分担の交渉に有利に加わることが可能となった。結果として、UNICEFやCRSをはじめとする各団体から物資の配給を依頼されることになった。また、UNからサリプル州の支援活動の取りまとめを行うleading agencyとして指名されることとなった。既に各NGO間で役割分担が決まった後、支援に参加したコソボと比較すればより役割は大きくなったといえよう。 初期の政府資金による初動立上によりその後のUN、他国の資金、他の援助代替の物資獲得に役立てることが可能となっている。車輌・無線についても単なる活動の道具というより安全・保安上不可欠なものであり中・長期的にみれば不可欠な物資であり、出動当初より調達手続きにはいるべきものである。これらはプロジェクトと切り離し、アフガニスタンでの支援活動が単なる緊急出動ではなく、国家の最構築による紛争予防という事業へ関わるという戦略的見通しに基づいて決定される必要がある。 |
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