2016年2月29日~3月4日、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を米国・ワシントンD.C.にて開催
イベントレポート
Session9: Education in Emergencies (EiE) Coordination and the Cluster System
「緊急支援においてもカギを握るのは事前のすりあわせ」
3日目は2日目の内容のリキャップから始まりました。
前日のトピックである「Links Between Education and Other Sectors」「Emergency Preparedness & Contingency Planning」「EiE Advocacy」「Psycosocial Support」について、前日に参加者から募ったボランティア1名が、10分ほどで皆に発表しました。
3日目の一つ目のセッションは「Coordination and the Cluster: The Role of the INEE in Education in Emergencies」でした。ファシリテーターは外部団体からの参加者で、これまでいくつかの緊急支援において、教育クラスターのリードを務めたことのある人でした。初めにグループごとに、コーディネーション(調整)に関して起こりうる「良い経験」と「困難な経験」を議論し合いました。このグループワークは、それぞれのグループが絵をかいたり、チャートを使ったりといった創造的なやり方で模造紙に上記の経験を表し、他のグループに発表するという形式で行われました。通常の発表の枠にとらわれずに寸劇を披露したグループもあり、盛り上がったグループワークとなりました。
その後、ファシリテーターからは改めてコーディネーションの「利点」と「チャレンジングな点」の説明がありましたが、グループワークで出てきたような「活動の重複を避ける」や「リーダーシップスキルの欠如」といった点が挙げられました。その後、緊急事態におけるクラスター・アプローチ(※1)の説明があり、教育については2006年からグローバル・レベルのクラスター・アプローチが採られていることを学びました。クラスター・アプローチは災害が発生した際の緊急時、またコンティンジェンシー・プランニング(参照:Day2, Session6: Emergency Preparedness & Contingency Planning)の際に用いられ、すべてのセクターや活動において、予測可能性、説明責任、パートナーシップを目指すことや、現地政府とのより良い関係性を築くことが目的にされていることも学びました。現在11のクラスターがあり、それぞれをリードする組織(以下、リード)が定められています。また、グローバル・レベルの教育クラスターにおいてはユニセフとセーブ・ザ・チルドレンが共同のリードを取っており、これはほかのクラスターでは見られない特徴となっています。 続いて、教育のクラスター会議が実際にどのように運営されるか、グループでロールプレイを行い、学びました。グループの中の各人がクラスターのリード、共同リード、他の国際NGOからの参加者、政府からの参加者、ローカルNGOからの参加者になりきって、それぞれが個々の利益を持ちつつ、いかにクラスター会議の場で調整しながら目標に向かって協力していくことが出来るかを体験する機会となりました。私の参加したグループでは、自分たちがリードを取るべきと思っている政府からの参加者がそうできないことにフラストレーションを抱えていたり、ローカルNGOからの参加者は自分たちの声が届いていないことに不満を持っているという中で、リードであるUNICEFからの参加者が会議の進行役としていかにバランスを取ってまとめていくかが焦点となりました。
ファシリテーターはセッションの中でシリア北部およびフィリピンでの緊急時の自身のクラスター・リードの事例をところどころ織り交ぜて説明してくれ、実際の現場ではどのようにクラスターのシステムが動いているかも学ぶことが出来て、貴重な機会となりました。
利川 豊
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
※1)クラスター・アプローチ(クラスター)
国際人道支援の現場において、分野ごとに得意な団体が連携、形成して支援の重複やギャップを避けるためのアプローチ。主に食料安全保障、キャンプ調整及び運営、早期復旧、教育、緊急シェルター、緊急通信、保健、輸送、栄養、保護、水と衛生の11分野のクラスターが存在する。
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イベント概要
ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」(※)の一環として、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を、来年2月29日~3月4日の日程で米国・ワシントンD.C.にて開催します(共催:米国NGO団体Mercy Corps)。
これは、昨今の世界情勢や緊急人道支援の性質と傾向、また以前よりJPF加盟NGOから寄せられていたトレーニング開催への高い要望を鑑み、JPFが教育分野における国際的なミニマム・スタンダード(INEE)についての学習機会の提供を模索してきた結果によるものです。
本研修参加者は研修終了後、トレーナーとして年度内に日本にて約2日間の研修を実施していただくことになります。よって、緊急教育支援に従事した経験を持ち、かつ日本での普及活動に意欲的な方を対象に開催すべく、研修内容や参加者の応募資格、条件等については鋭意調整中です。詳細決定次第、随時ご案内いたしますが、ご関心のある方は直接下記窓口までお問い合わせください。
INEE教育ミニマム・スタンダードとは:
緊急教育支援の情報ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergency : INEE)が策定した緊急時の教育におけるミニマム・スタンダードです。INEEの運営には、UNHCE、UNICEF、UNESCO、USAID、World Vision Internationalなどが入っており、国際的に認知されている基準です。本スタンダードは、ハリケーン・台風・地震・洪水などの「自然災害」と紛争や内戦によって引き起こされた「複合的な緊急情勢」に緊急的に対応するために設計されており、現在170ヶ国で使用されています。
参考:
INEE
http://www.ineesite.org/en/
INEEミニマムスタンダード
http://toolkit.ineesite.org/toolkit/INEEcms/uploads/1012/INEE%20MS%20Japanese_2010.pdf
内閣府HP:緊急時の教育のための最低基準とは
http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article033.html
※「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。
研修概要
- 期間
- 2016年2月29日(月)~3月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。 - 渡航先
- 米国・ワシントンD.C.
- 費用
- 無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、ESTA(渡航認証)申請費用、研修期間の保険料、米国国内宿泊費、日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。 - 定員
- 日本人10~15名 (外国からの参加者複数名)
※厳正な審査の上、参加者を決定します。 - 言語
- 英語
本件に関するジャパン・プラットフォーム(JPF)についてのお問い合わせ先
特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム
NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753