2016年2月29日~3月4日、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を米国・ワシントンD.C.にて開催
イベントレポート
Session7: Educations in Emergencies Advocacy
「アドボカシーを効果的に活用するには」
研修2日目のセッション7では、緊急教育支援のアドボカシーについて学びました。75分のセッションで「①アドボカシーとは何か」、「②なぜアドボカシーは重要なのか」、そして「③アドボカシーはどのように行うのか」について研修参加者全員で意見交換をしたり、小グループに分かれて、ディスカッションを行ったり、どのように政策決定者やドナーに働きかけるかをケーススタディの中で考え、発表しました。また、①から③についてのディスカッションでは、アドボカシーの対象者についても検討しました。
セッションは担当者のファシリテーションの元、参加者全員で考えて意見交換を行う形で進みました。
「①アドボカシーとは何かについて」では、アドボカシーは、変化をおこし、変化そのものに影響を与えるものであり、したがって影響を与えるプロセスであるという意見が出ました。例えば、日本の公的資金事業とその資金で実施する事業の質を向上させるために公的資金提供者やドナーに働きかける、初等教育の重要性について国会議員に働きかける、国際連合とNGOの協働の重要性について政治家に働きかけるといったことです。
「②何故アドボカシーが重要なのか」では、アドボカシーの必要性についてディスカッションを行いました。人々には権利がありますがその権利が尊重されていないことがあります。そういった際に必要とされることとして、自分自身の権利だけでなく他者の権利も含めて尊重してもらえるよう国や世界で声を上げていくといった例が挙がりました。また、メッセージのインパクトがきちんと伝わっているかについて確認をし、変化をもたらすための明確かつ説得力のある議論を行う必要があるといった意見もでました。
「③どのようにアドボカシーを行うか」では、まず誰が政策決定者なのか、その政策決定者にどのようにアプローチしたらよいか、アドボカシーをする上で誰からサポートが得られるかを考慮する必要があるという話がありました。アドボカシーの方法としては、直接話して伝える、印刷物を配る、記事にして発行する等の他に、ラジオやフェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアなどを通して行う方法も紹介されました。アドボカシーの対象者は、多くの人々に影響を与えることのできる立場にいる人々であり、例えば政策決定者である国会議員、政治家、政府機関の代表者、地域社会のリーダー、宗教指導者やドナー、そして人道支援団体が当てはまりますが、軍も該当する場合があるとして挙げられました。例えば、紛争が起こっている場合、学校が軍に占拠されることもあり、子どもたちが安心して遊び、学べる場がなくなるといったことがあります。そういった状況で、子どもたちの遊びや学びの場を維持するための働きかけが必要となります。アドボカシーを実施する際には、対象人口、エビデンスや権利に基づき、特定の状況に合わせて一つのメッセージに絞ることが重要だという気づきがありました。
その後、①から③までをふまえて、実際に、アドボカシーのメッセージを作成するグループワークへ移りました。30名の参加者は5つのグループに分かれ、国を選択し、その国では緊急教育支援の一環として、どういったアドボカシーを行ったらいいかを話し合いました。そしてディスカッションの後、グループごとに発表を行いました。各裨益者が直接政策決定者やドナーに要望を伝えるという方法を選んだグループ、統計やこれまでドナーが資金提供をしてきた事業について確認をしながら更なる支援の必要性を唱える方法を選んだグループ、国際会議などの場を活用してメッセージを伝えるという方法を選んだグループもありました。セッションを通じて、資金を獲得する目的だけにとらわれず、メッセージを伝える相手のことを理解し、伝えたいメッセージを様々なツールを用いて効果的に説明できることが大切であると学びました。
栗原 真由花
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
前のレポート Session6: Emergency Preparedness & Contingency Planning
次のレポート Session8: Psychosocial Support in Education in Emergencies (EiE)
イベント概要
ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」(※)の一環として、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を、来年2月29日~3月4日の日程で米国・ワシントンD.C.にて開催します(共催:米国NGO団体Mercy Corps)。
これは、昨今の世界情勢や緊急人道支援の性質と傾向、また以前よりJPF加盟NGOから寄せられていたトレーニング開催への高い要望を鑑み、JPFが教育分野における国際的なミニマム・スタンダード(INEE)についての学習機会の提供を模索してきた結果によるものです。
本研修参加者は研修終了後、トレーナーとして年度内に日本にて約2日間の研修を実施していただくことになります。よって、緊急教育支援に従事した経験を持ち、かつ日本での普及活動に意欲的な方を対象に開催すべく、研修内容や参加者の応募資格、条件等については鋭意調整中です。詳細決定次第、随時ご案内いたしますが、ご関心のある方は直接下記窓口までお問い合わせください。
INEE教育ミニマム・スタンダードとは:
緊急教育支援の情報ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergency : INEE)が策定した緊急時の教育におけるミニマム・スタンダードです。INEEの運営には、UNHCE、UNICEF、UNESCO、USAID、World Vision Internationalなどが入っており、国際的に認知されている基準です。本スタンダードは、ハリケーン・台風・地震・洪水などの「自然災害」と紛争や内戦によって引き起こされた「複合的な緊急情勢」に緊急的に対応するために設計されており、現在170ヶ国で使用されています。
参考:
INEE
http://www.ineesite.org/en/
INEEミニマムスタンダード
http://toolkit.ineesite.org/toolkit/INEEcms/uploads/1012/INEE%20MS%20Japanese_2010.pdf
内閣府HP:緊急時の教育のための最低基準とは
http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article033.html
※「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。
研修概要
- 期間
- 2016年2月29日(月)~3月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。 - 渡航先
- 米国・ワシントンD.C.
- 費用
- 無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、ESTA(渡航認証)申請費用、研修期間の保険料、米国国内宿泊費、日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。 - 定員
- 日本人10~15名 (外国からの参加者複数名)
※厳正な審査の上、参加者を決定します。 - 言語
- 英語
本件に関するジャパン・プラットフォーム(JPF)についてのお問い合わせ先
特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム
NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753