NGO能力強化研修プログラム

2016年2月29日~3月4日、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を米国・ワシントンD.C.にて開催

イベントレポート

GUEST SPEAKER: Libraries Without Borders

「新しいテクノロジーの活用とイノベーション」

4日目午後の最初のセッションはこれまでのセッションとは少し趣向が変わり、「Libraries Without Borders」のExecutive Director、Allister Chang氏による同団体の活動紹介とQ&Aセッションでした。

Libraries Without Bordersは、2007年にフランスで設立されたNGOで、図書館の設立や強化、図書館員の育成、本の配布などを通じて、教育や情報へのアクセス、文化の保護を促進するための支援活動を20か国において行っているそうです。今回のセッションでは、Libraries Without Bordersが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とのパートナーシップのもとで開発した「IDEAS BOX」というツールキットが紹介されました。

新しいテクノロジーの活用とイノベーション

IDEAS BOXは移動式の図書館やメディアセンターを設置するためのツールキットです。タブレットやノートパソコン、テレビセットやカメラ等の機材、机や椅子などの家具等が含まれており、「KoomBook」という百科事典サイズのサーバーにスマートフォーンやタブレットなどでWi-fi接続することで、KoomBook本体に保存された本や映像等を閲覧したり、インターネットに接続することができるとのことでした。このキットを利用することにより、災害や紛争から逃れてきた避難民などが教育やトレーニングの機会を得たり、情報や文化、心理社会的サポートなどへのアクセスに活用したりできるスペースを、どこにでも簡単に設置することができます。Allister Chang氏のプレゼンテーション後には、研修参加者から、IDEAS BOXの現場における実際の活用状況や効果、コストや機能(電源駆動時間、同時接続可能端末数など)、言語や識字、コンテンツ不足に関わる課題、今後の計画など、実務者らしい様々な観点からの質問が数多く上がりました。

新しいテクノロジーの活用とイノベーション

私たちの支援活動は、過去の成功例や研鑽されてきた従来の手法に基づいて行われがちです。このこと自体は質の高い支援を行うためにとても大切なことですが、IDEAS BOXのような新しいテクノロジーは、その活用の仕方次第で、INEEの最低基準の第2ドメイン「アクセスと学習環境(Access and Learning Environment)」(下図参照)や第3ドメイン「教授と学習(Teaching and Learning)」(同図)を始め、緊急時の教育を大きく前進させる可能性を秘めているのも事実です。テクノロジーの活用によるイノベーションをしっかりと念頭においておくことの重要性を考えさせられるセッションでした。また、このセッションの内容からは離れてしまうのですが、午前中のセッションでプレゼンテーションスキルを学んでいたこともあり、Allister Chang氏の、自信に溢れた、説得力のある素晴らしいプレゼンテーションが非常に印象的でした。

なぜ緊急人道支援で教育が必要なのか?

(出所:「What is the content of the INEE Minimum Standards?」(p.8)、
INEE Minimum Standards Handbook published by INEE in 2010 as 2nd edition)

佐藤 収
(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)

前のレポート Session14: Presentation Skills
次のレポート Session15: Training & Adult Learning

イベントレポートの目次一覧

イベント概要

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」(※)の一環として、「INEE教育ミニマム・スタンダード・トレーナー養成研修」を、来年2月29日~3月4日の日程で米国・ワシントンD.C.にて開催します(共催:米国NGO団体Mercy Corps)。

これは、昨今の世界情勢や緊急人道支援の性質と傾向、また以前よりJPF加盟NGOから寄せられていたトレーニング開催への高い要望を鑑み、JPFが教育分野における国際的なミニマム・スタンダード(INEE)についての学習機会の提供を模索してきた結果によるものです。
本研修参加者は研修終了後、トレーナーとして年度内に日本にて約2日間の研修を実施していただくことになります。よって、緊急教育支援に従事した経験を持ち、かつ日本での普及活動に意欲的な方を対象に開催すべく、研修内容や参加者の応募資格、条件等については鋭意調整中です。詳細決定次第、随時ご案内いたしますが、ご関心のある方は直接下記窓口までお問い合わせください。

INEE教育ミニマム・スタンダードとは:
緊急教育支援の情報ネットワーク(Inter-Agency Network for Education in Emergency : INEE)が策定した緊急時の教育におけるミニマム・スタンダードです。INEEの運営には、UNHCE、UNICEF、UNESCO、USAID、World Vision Internationalなどが入っており、国際的に認知されている基準です。本スタンダードは、ハリケーン・台風・地震・洪水などの「自然災害」と紛争や内戦によって引き起こされた「複合的な緊急情勢」に緊急的に対応するために設計されており、現在170ヶ国で使用されています。

参考:

INEE
http://www.ineesite.org/en/

INEEミニマムスタンダード
http://toolkit.ineesite.org/toolkit/INEEcms/uploads/1012/INEE%20MS%20Japanese_2010.pdf

内閣府HP:緊急時の教育のための最低基準とは
http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article033.html

※「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」について:
「TOMODACHI NGOリーダーシップ・プログラム」とは、米日カウンシル(US-Japan Council)主導のTOMODACHI イニシアチブ、ならびにJ.P.モルガンの支援を受け、JPFが米国のNGO団体マーシー・コー(Mercy Corps)とのパートナーシップのもとに実施している研修事業です。東日本大震災におけるNGOの支援活動から得られた貴重な経験や教訓を活かし、日本のNPO/NGOが国内外でより効果的な人道支援活動を行うための能力強化を目的としており、2013年4月~2016年3月までの3年間で、人道支援に関するさまざまな研修を計画、実施しています。

研修概要

期間
2016年2月29日(月)~3月4日(金)
※この日程には、出発・帰国日は含まれていませんのでご注意ください。
渡航先
米国・ワシントンD.C.
費用
無料
※米国往復航空運賃(上限あり)、ESTA(渡航認証)申請費用、研修期間の保険料、米国国内宿泊費、日当(注)はJPFが負担します。
注)日当はMercy Corpsの規定額に基づき、米国ドルで支給されます。
定員
日本人10~15名 (外国からの参加者複数名)
※厳正な審査の上、参加者を決定します。
言語
英語

本件に関するジャパン・プラットフォーム(JPF)についてのお問い合わせ先

特定非営利活動法人(認定NPO法人)ジャパン・プラットフォーム

NGO能力強化研修プログラム担当:鈴木、谷口
E-mail:training@japanplatform.org
〒102-0083 東京都千代田区麹町3-6-5 麹町GN安田ビル 4F
TEL:03-6261-4751(事業部直通) 代表:03-6261-4750 FAX:03-6261-4753