ユニクロ、ジャパン・プラットフォームを通じて、 能登半島の地震・豪雨で被災された方々にヒートテックを寄贈
2017年3月22日に開催した「JPFイエメン人道危機対応」プログラムイベント「イエメン最新レポート:紛争激化から2年、イエメン人が語る人道危機」は、約40名の方に参加いただき、お陰さまで盛況のうちに終了いたしました。ご参加頂いた皆様、ご協力頂いた関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
日時 | 2017年3月22日(水)14:00~16:40(13:30開場) |
場所 | グロービス経営大学院 東京校 (〒102-0084 東京都千代田区 二番町5−1 住友不動産麹町ビル) |
主催 | ジャパン・プラットフォーム |
イエメンのサナア大学で客員研究員を勤めるなど、30年以上の間イエメンに関する研究や調査に携わる日本のイエメン研究の第一人者であるアジア経済研究所 新領域研究センター 上席主任調査研究員 佐藤寛氏より、イエメンの現代史を振り返りながら、現在イエメンで起きている混乱が何に起因するものなのか?の説明をして頂きました。
基調講演 アジア経済研究所 佐藤寛氏
続いて、JPF海外事業部のイエメン支援プログラム「イエメン人道危機対応」を担当する鳴海が、支援内容や実績について説明をしました。本プログラムでは2015年10月から2017年2月までの15ヶ月間に ADRAジャパンとアイキャンの2団体がイエメン国内および難民受け入れをしているジブチにおいて、食糧配布、水衛生、栄養改善、子どもの保護の分野で延べ20万人以上の人々に支援を届けることが出来ました。
2017年3月1日から始まった新しいフェーズではセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとわかちあいプロジェクトの2団体が加わり、また支援分野・支援地域も拡大する予定です。
アイキャンの現地提携団体であり、イエメン国内で支援事業を実施しているCharitable Society for Social Welfare(CSSW)事務局長のAbdulwasea Ahmed Alwaseai氏が現地からのビデオメッセージでイエメン国内の実情を報告しました。この事業では現在イエメン国内で最も激しい戦闘が行なわれているタイズ州で弱い立場に置かれている人たちに食糧の配布をしています。そのタイズで戦闘によって破壊された町並み、家を追われテントで避難生活を送る人たちの様子や、支援物資を受け取る人たちの悲痛な叫びが紹介された他、Abdulwasea氏からは日本の人たちによる支援で人道支援活動が出来ていることへの感謝の意が伝えられました。
CSSW Abdulwasea Ahmed Alwaseai氏
次にADRAジャパンの提携団体であるADRAイエメンのプロジェクト・コーディネーター Mohammed Ba Hashwan氏からの発表がありました。Mohammedさんは美しい故郷が戦闘により自分の未来を描ける場所で無くなってしまうかも知れない悲しみを伝えてくれた他、長引く戦闘で最も負の影響を受けているのは子どもたちである、と訴えました。
ADRAイエメン Mohammed Ba Hashwan氏
アイキャンの事業担当者である藤目春子氏は、ジブチで避難生活を送るイエメンの人たちの「故郷に帰りたいが激しい戦闘のためにイエメンに戻ることは出来ない。生活環境は非常に厳しいがジブチで難民生活を続けざるを得ない」という悲痛な声をビデオインタビューを交えて紹介しました。
こちらのパートでは、先のプレゼンではカバー出来なかった様々なトピックについて話し合われました。
アジア経済研究所佐藤氏:イエメンはもともと中央政府が弱いため、政府のストラクチャーに変化があったからといって市民の生活が劇的に変わったわけではない。ただ、紛争の影響で物流が滞っているため生活が厳しくなっていること、紛争が特に激化している場所では人々がお互いを助け合う余裕がなくなってきているのかも知れない。
ADRAイエメンMohammed氏:食糧の供給は非常に厳しい状況にあり、物価も150%以上上昇しているため人々は生存するのに必要な食糧を充分には得られていない。我々の事業は最も弱い立場にある人を支援対象にしているが、支援の対象から外れている人でも必要な物資に十分アクセスできているとは言えない状況になっている。ADRAの事業地はイエメン北部でサウジアラビアと国境を接しているため、サウジから物資を調達できる点が有利に働いている。
ADRAイエメンMohammed氏:国内避難民の人たちは住んでいた家を離れ、多くの場合収入を得る手段も失っているため複合的な困難に直面している。そのため、コミュニティがそういう人たちを支えなければならないのだが、人道危機が長期化し国内避難民の数も増えているためコミュニティの負担が大きくなってきているのが実情だ。
ADRAイエメンMohammed氏:紛争により日常生活が失われてしまった中で、子どもたちは自分の身に起こった変化に対処出来なくなっている。空爆のため自分の通っていた学校の校舎が破壊され、通学出来なくなった子どもも多数いるが、学校が再開され復学しても学習能力が回復しない。友達や先生、家族と引き離された子どもたちの受ける影響はそれほど大きい。
ICAN藤目氏:紛争から逃れてきて今は安全な場所にいるとはいえ、やはり子どもたちの心理状況には影響があると思われる。ただ、爆撃の状況を絵に書く子は笑顔を見せながらお絵かきをするので、実際にはどういう心理状態なのかは判断が難しい。太平洋戦争を経験した人たちからは、こういった心理状態になることが分かる、という話も聞く。
トークセッション
ADRA小出氏:メール、スカイプ、携帯電話など様々なツールが使えるので現地とのやり取りにそれほどの苦労はないが、そういうツールに頼りすぎるとコミュニケーションが一面的になるので、数ヶ月に一度第三国でADRAイエメンのスタッフと合流して対面で話し合うようにしている。やはり現地スタッフといかに信頼関係を築くことができるかが遠隔によるプロジェクト運営を成功させる鍵だと思う。
ADRAイエメンMohammed氏:もちろん遠隔でコミュニケーションをとるのは難しいが、小出さん始めADRAジャパンの皆さんとお互いに信頼関係を持って事業を運営している。フィールドスタッフとして誇りを持ってやっており、その点を小出さんたちが理解してくれていることも嬉しく思っている。日本の財務管理、金銭管理はものすごく細かく、何枚書類が必要なのか分からなくなることもある。ようやく最近、日本のシステムがちゃんと分かってくるようになった。
ICAN藤目氏:最初は現地スタッフと意思疎通が難しかったが、プロジェクトが進むにつれ最近はいろんなことが話せるようになってきた。それでも想像力が及ばないこともあり、そこは難しいと常に感じている。
トークセッション ADRA
ADRAイエメンMohammed氏:JPFを通じて様々な人道支援が届けられていることに対して、日本政府・JPF・日本人の皆さん全てに感謝をしている。イエメンでは「日本:Other Planet(違う惑星)」というテレビ番組が放映されていることもあり、イエメン人は日本に対して「愛しい国」という感覚をもっている。今後は日本とイエメンがお互いをもっとよく知ることが大事なのではないか。
このほかにも現場からの報告及び基調講演の内容に関して参加者から様々なコメントや質問が寄せられ、活発な議論が展開されました。
シンポジウムを締めくくるにあたり、アジア経済研究所の佐藤寛氏より、「アジア経済研究所でもイエメンに関するセミナーを時折行なうが、今回日本の市民社会の皆さんと一緒にイエメンについて考える機会が出来て大変よかった。またADRAイエメンのMohammedさんから直接いま現地で何が起きているのかを多くの方に知ってもらうことが出来て、このイベントを主催したジャパン・プラットフォームにも感謝したい。ご来場いただいた皆さんには今後も引き続きイエメンに関心を持って頂きたい。」と訴えました。
佐藤先生 閉会挨拶
今、知って欲しいJPF最新のお知らせ