【イベントレポート】 ~3/8国際女性デーによせて~ 女性・平和・安全保障(WPS): 災害、紛争下の女性たちの声、その尊厳のために  ~日本のNGOによる"WPS”これからの課題とヒント

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2025年は、平和と紛争予防、紛争解決には女性の平等な参画や紛争下の性暴力からの保護、ジェンダー平等が必要であると明記した「女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security: WPS)に関する国連安保理決議の採択から25周年となります。先月2月4~6日、日本はノルウェーと共に、国連加盟国のWPSに関する最大のネットワークであるWPSフォーカル・ポイント・ネットワークの共同議長国となり、東京で首都会合を開催しました。

これにともなって、翌2月7日、ジャパン・プラットフォーム(JPF)は「災害、紛争下の女性たちの声、その尊厳のために:日本のNGOによる“女性・平和・安全保障(WPS)”これからの課題とヒント」と題したイベントを主催しました。これは、日本のNGOによるWPSを推進する支援活動における、女性の声や現地の声、これからの課題やヒントを共有、議論し、課題解決の可能性を広げていくことを目的としています。

約100名のお申し込みをいただき、NGO関係者やWPS関係者、メディア、個人の皆さまにご参加いただきました。当日は会場も交えて活発な意見交換が行われました。

左からJPF樋口、堀場氏、上川前外相、バービア大使、SEEDS Asia大津山氏、井出衆議院議員、WVJ池内氏、REALs瀬谷氏 🄫JPF

イベント冒頭では、外務大臣時代(2023年9月~24年10月)、主要外交政策の一つとしてWPSを推進し、現在もWPS議会人ネットワークジャパン会長として力を入れる、前外相の上川陽子氏と、ジョージタウン大学 女性・平和・安全保障研究所所長、初代米国女性問題担当大使のメラーン・バービア氏が登壇。WPSの推進にリーダーシップをとるお二人から力強いメッセージをいただきました。

冒頭あいさつより(一部抜粋)

衆議院議員、WPS議連会長、前外相 上川陽子氏 衆議院議員、WPS議連会長、前外相
上川陽子氏

日本を代表するNGOの皆様が集まるJPF主催で、WPSフォーカルポイント・ネットワーク会合のサイドイベントが開催されますこと大変嬉しく、心からお祝いを申し上げます。(WPSの推進は、)政府だけでも、議会人だけでも叶いません。また市民社会やビジネス・コミュニティ、地域の中で活躍するグループの皆さんも一緒になって推進していくことで、WPSアジェンダがいうところの「女性の意義ある参画」が可能となると考えています。意思決定の場に多様な声を、そのためにはまずは女性の声を増やしていくこと、女性が平和と安全のために自分たちの能力を十分に発揮できる環境づくりをしていくことが重要だと思います。
ジョージタウン大学 女性・平和・安全保障研究所 所長、初代米国女性問題担当大使 メラーン・バービア氏 ジョージタウン大学 女性・平和・安全保障研究所 所長、初代米国女性問題担当大使
メラーン・バービア氏


JPFの皆さまとご一緒できることを大変嬉しく思います。戦争が終わったあと、自然災害が発生したあとになにが起こるのか。重要な柱の一つは、女性が支援、復興、再建において果たす役割です。特にいます。、自然災害への対応に関しては私たちが日本から学ぶことはたくさんあります。WPSと防災・減災リスクの軽減には強い相乗効果があり、日本がこの分野で培った膨大な経験、知見を共有することは、世界にとって貴重な教訓となるでしょう。
現在米国では、既存および今後のすべての国際開発援助に対して停止措置がとられており、私の深い悲しみをお伝えせずにはいられません。今後どのような結論に至るかはわかりませんが、数週間以内には明確になり援助が再開されることを願っています。皆さまは、多くの困難に直面しながらも、人々の生活に大きな違いをもたらしており、その貢献は計り知れません。お一人ひとりの尽力に心から感謝を申し上げます。 

続いてJPFより、女性などぜい弱な立場に置かれやすい人々の保護やジェンダーへの配慮を常に重視しながら、加盟NGOと共に取り組んでいるWPSへのコミットメントとして、事業の策定やガイドラインなどについてお話しました。

樋口博昭/JPF事業推進部・事業評価部・事業管理部部長 「JPF事業のWPS」
樋口博昭/JPF事業推進部・事業評価部・事業管理部部長

JPFで、加盟NGOに事業をおこなうときに「事業実施助成ガイドライン」というものがあります。そのなかに「JPF及び加盟NGOは国内外の人道支援現場において性的搾取・虐待がなくなることに努め、(中略)性的搾取・虐待からの保護に関する方針を定める」とあります。具体的に言うと、人道危機において、女性、子どもなどぜい弱な立場におかれた人々を保護するリスクが回避・軽減される支援を優先する。これがプログラムを策定する時の大前提です。

続いて、JPF加盟NGO4団体(SEEDS Asia、ピースボート災害支援センター、ワールド・ビジョン・ジャパン、REALs)から、国内外におけるWPSの実践と課題、女性たちの声、男性たちの変化、手ごたえなどを報告しました。

大津山光子/SEEDS Asia事務局長 「多様な主体による、国内災害後の復興まちづくり支援―声なき声を可視化する―」
大津山光子/SEEDS Asi(SEEDS))事務局長

台風の被災地で、地域再建のため実施したアンケ―トからは「地域の方々の繋がりが、実は避難所で安心できたポイントだった」というまちの魅力も発見できた一方、「子どもの遊び場がなく母親同士で集まる場所がない」という課題も浮かび上がりました。何よりこれまでは声が反映されにくかった女性や子どもを含む地域の人々の声を集めたことで、多様な主体が参画することの価値が広く認識されたことが最も大きな成果でした。翌年にはまちづくり委員会という形で、女性や若者を含めた組織が立ち上がり、計画の策定へと繋がっていきました。多様な主体が尊重され、主体的に意思決定に参画できる社会。それがすなわち持続可能な社会だと思います。
池内千草/ワールド・ビジョン・ジャパン 支援事業部 プログラムコーディネーター 「バングラデシュ・ミャンマー避難民キャンプでのGBV予防・対応」
池内千草/ワールド・ビジョン・ジャパ(WVJ)) 支援事業部 プログラムコーディネーター

バングラデシュ・コックスバザールのミャンマー避難民支援において、暴力など弱い立場におかれた女性と女の子を対象とした啓発セッションや研修、夫婦のセッションなどを実施してきました。参加した35歳の男性は「私はこれまで聞き上手だと思っていましたが、妻の話を遮ってしまうことが多々あることに気づきました。この活動によって今では私たちはお互いにオープンで正直になり2人の関係も平等でお互いに敬意を持ったものになりました」と語ってくれました。また、29歳の女性は「この研修に参加してコミュニケーションの方法や自分の言いたいことをより断定的かつ効果的に表現する方法を学びました。夫は私の気持ちにもっと反応してくれるようになって尊重されていると感じています」と話していました。また、料理のスキル研修を受けた女性は、今では家の中に小さな店をオープンし、お菓子を作って毎月平均10ドルを稼ぎ家計のやりくりに役立てています。様々な研修を通して知識とスキルを身につけた女性の中から、コミュニティリーダーが生まれています。実用的な知識で自信をつけた女性たちは、情報に基づいて決定を下し、家族や地域社会のために主張できるようになりました。現在は隣人や友人にスキルや知識を広めています。 

※ JPFでは、民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し、「ロヒンギャ」ではなく「ミャンマー避難民」という表現を使用します。
瀬谷ルミ子/Reach Alternatives理事長 「南スーダンにおけるGBV予防と参画のためのコミュニティ支援」
瀬谷ルミ子/Reach Alternatives(REALs理事長

女性が参画した和平プロセスは、そうでないものに比べて15年以上持続する割合が35%上昇します。女性が参画した和平合意も、暗礁に乗り上げた時を乗り越える確率が高くなることが分かっています。また、市民社会の代表が参画した和平プロセスの場合、合意が失敗する確率は64%下がります。女性や若者、市民団体など意思決定から排除されている人々が参画することで市民の支持を得る和平合意が生まれ、和平が後退せず成立する可能性が高まります。一方、実際に過去に女性が参画した和平プロセスは全体の1割にも満たない。ここに平和の伸びしろと捉え、女性や若者が参画する和平プロセスを100%にするべく、コミュニティレベルで紛争解決に取り組む人材育成と仕組みづくりを行い、育成された人材がリーダーシップを取り政治・政策決定などにも参加できるような道筋をつくることで、世界平和の実現可能性を高めることを目指しています。
南スーダンの避難民キャンプで、私たちREALsが育成したある女性が私のところにきてこう言いました、「私を差別しないでくれてありがとう」。女性であることで学校に行かせてもらえず、過去にコミュニティで行われた人材育成支援は教育を受けた男性ばかりが対象に選ばれていたので、彼女がコミュニティを平和のために貢献したいと思っていたけれどその機会がなかったそうです。私たちREALsは、読み書きができなくても意思と素養がある人たちを対象に選ぶことを知り、彼女は勇気を出して初めて志願をしたそうです。その結果、彼女は今ではコミュニティの中で争いや暴力の予防の取りくみを推進していて、女性たちも平和の担い手となれることのロールモデルになっています。
辛嶋友香里/ピースボート災害支援センター 現地コーディネーター 「避難所運営体制の現場における課題と対応」
辛嶋友香里/ピースボート災害支援センター(PBV) 現地コーディネーター

東日本大震災以来、105箇所以上の避難所の運営に携わってきました。ある避難所で、受付に1人の女性がいらっしゃり、とても小さな声で「おむつをください」とおっしゃられました。お子さんのもの、または親御さんの介護用かと思ってサイズを尋ねたら、不安そうにお顔がこわばっていたので、奥でゆっくりお話しませんかとお声がけしました。その瞬間、涙を流しはじめました。伺うと、その方は独身で、お1人で余震が怖くて半壊以上の家に帰れず、1カ月半近くも軽自動車で車中泊を続けていました。そのストレスや緊張、我慢の限界で失禁を繰り返してしまっていたのです。そのほかにも目に見えない課題はたくさんあり、被災者の状況を理解するためには、立場別の特徴と、1人1人の被災者が抱えている困難をさまざまな角度から複合的に見ていく必要があると思います。その2つの側面を見る時に女性の声というのは多くの背景を含んでいるのでとても大切なニーズとなっていくと感じています。

後半のパネルディスカッションでは、WPSの視点を入れた活動を実際に行う際、最も困難だったこと、またWPSの活動を効果的に実施できるヒントやアイデアなどについて、各団体の取り組みを紹介、さまざまな意見が交換されました。会場からも実際に現地で支援にあたるNGOからも質問があがりました。

参加した方からは、「被災地や紛争下で女性の声が反映されにくい文化や社会的な課題があること、その解決に向けて日本のNGOが多様な取り組みで尽力されていることがわかった」「女性たちの声や、NGOの皆さんの実感のこもったコメントを聞くことができてよかった」「女性リーダー育成のためには、日頃からの対策の積み重ねが必要であり課題」といった声が聞かれました。

会場後ろからのショット 🄫JPF当日は会場も交えた活発な意見交換がされた 🄫JPF

モデレーターを務めた堀場氏は、最後に次のように締めくくりました。

堀場明子/日本財団 国際事業部シニアオフィサー(笹川平和財団から出向中)、ジャパン・プラットフォーム理事 堀場明子/日本財団 国際事業部シニアオフィサー(笹川平和財団から出向中)、ジャパン・プラットフォーム理事

私もタイ南部の紛争地で活動していますが、リーダー育成の話をしても、「いやいや女性はリーダーになれないから」と言われてしまい、なかなかスタートできないんです。持続的に、つまり長くコミットして活動しないとなかなか意識の変化に結びつかない点も難しいところではあります。
「WPSアジェンダ」というのは、別に女性のためだけにあるわけではないんですね。WPSがしっかりと広がれば、みんなにとっていいということを、我々は常に言い続けなくてはいけない。SDGsはだいぶ日本では広がってきましたが、まだWPSは広まっていません。ぜひ呼びかけのスローガンとして、さまざまな活動にWPSの視点が入っていることを常に意識しつづける。また、ちゃんと女性の代表者や意思決定者がいるなど、支援を実施する我々の団体こそWPSを実践してるかもチェックしながら活動していきたいと思います。 
被災地でいきなり誰か女性のリーダー来てくださいと言っても急には生まれません。日頃からどのように女性、そして多様なリーダーシップが生み出されるのか、女性や若い人たちの政治参画も含めてリンクさせて、WPSをさらに推進していきたいと思っています。

女性や弱い立場に置かれた人への保護・支援は、男性も含め誰もが安心して生活しやすい社会、環境づくりにつながります。JPFと加盟NGOは、誰一人取り残すことない、より良い支援を展開するために、多様な人々と連携しながら今後もWPSに尽力していきます。

各登壇者のプロフィールやイベントの詳細はこちらをご覧ください>>
https://www.japanplatform.org/news/press/250131.html

本件に関するお問い合わせ先

特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム
企画運営 : 渉外広報部 広報   高杉、石丸
TEL: 03-6261-4035
E-mail: info@japanplatform.org

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