医療状況が悪化するレバノンで、子どもたちの歯とメンタルヘルスを守る

レバノンではいくつもの危機（複合危機）が長期化し、シリアからの避難民と、レバノン人やレバノンに長年暮らすパレスチナ難民を含むホストコミュニティ双方のぜい弱層に、大きな打撃を与えています。

政府の財政難による医薬品と人材不足から、人々は必要な医療を受けにくい状況にあり、パレスチナ難民の医療・保健を担うUNRWA（国際連合パレスチナ難民救済事業機関）も資金難から、薬不足や医療費の自己負担額増加などの問題が生じています^※1。またUNRWAでは、子ども専門の歯科や精神科サービスは提供しておらず、幼児期に歯と口腔の検診や、十分な治療を受けられない状況にあります。2023年末の調査^※2では、メンタルヘルスにおいてパレスチナ難民の子どもの約半数に不安障害、約3割にうつの症状が見られました。

ジャパン・プラットフォーム（JPF）加盟NGOのパレスチナ子どものキャンペーン（CCP）は、レバノンのパレスチナ難民キャンプで、医療・保健、心理社会的支援を実施しています。

医療・保健に関しては、CCPは2カ所の難民キャンプにあるすべての幼稚園で子どもの歯科検診を実施し、歯科クリニックで子どもと地域住民に治療を提供しています。また、歯と口腔ケアについての教室を開催し、子どもたちはゲームを通して歯に良い食べ物・そうでない物を知り、保護者は家庭での正しい口腔ケアについて学んでいます。

メンタルヘルス・心理社会的支援では、現地提携団体の児童精神科で、専門家による子どもの診療、家族へのカウンセリング、ソーシャルワーカーによる経過観察を行っています。また難民キャンプ4カ所で、ソーシャルワーカーによる家庭訪問とセンターでの個別面談を実施中です。

さらにこの先、コミュニティの住人自身が心理社会的支援に携われる状況を目指して、メンタルヘルス普及員の育成研修を2024年10月に行いました。受講者である母親12人は、心理社会的支援などについて学び、啓発活動に従事しています。

レバノンの情勢は流動的です。安全に細心の注意を払いながら、小さな子どもをはじめとする弱い立場にある人々の状況が悪化しないよう、JPFとCCPは今後も支援を継続してまいります。

※1 UNRWA, palestine refugees in lebanon: struggling to survive (2021.11.22)
※2 UNICEF, Trapped in a downward spiral, December 2023