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自然災害で避難を余儀なくされるリスクは過去約40年間で2倍になったといわれ※、武力紛争による新たな難民・国内避難民の発生も後を絶たない状況の中、人道危機発生時の対応はますます困難になることが予想されます。一方で、防災・減災への投資はその何倍も災害後の被害額を減らすことができるといわれ、平時からの取り組みが重要です。
※International Displacement Monitoring Centre “Disaster-related displacement risk: Measuring the risk and addressing its drivers”
人道支援においては、単に外部から支援を届けるのみならず、現地の人々が自ら、今後の災害や武力紛争などの発生に際して被害を最小にとどめ速やかに生活や社会を回復する力「レジリエンス(強靭性)」を高めることも重要です。
「アフガニスタン人道支援2016」においては、慢性的な人道危機状況において、特定のリスクや脅威の影響を受けやすい人々の脆弱性を低減することもめざす活動のほか、防災・減災のための活動の一環として、アフガニスタン国家災害管理省と災害協定覚書を締結しました。「南スーダン支援」でもレジリエンスの強化を通じて帰還と再生に備え、「モンゴル雪害被災者支援2017」でも災害リスクの軽減に焦点を当てています。
また、熊本地震の被災地においても、緊急支援フェーズ終了後には、地元NPOなどの人材育成と人材を支える基盤強化を中心に「地域力強化」を目指す活動へとシフトしました。
JPFが、「アフガニスタン人道支援2016」プログラムの方針の一つとして実施した、防災・減災(Disaster Risk Reduction:DRR)活動。その一環として、2016年11月21日~25日、アフガニスタン国家災害管理省(ANDMA)のMohammad Aslam Sayas副大臣を団長とした11名の災害管理のエキスパートと、DRR活動に関わるJPF加盟NGOの現地職員らを日本に招き、両国の防災・災害マネジメント関係者やNGOの関係構築・能力強化を図りました。
東京ではANDMAとNGOの取り組みを協議。仙台では仙台市まちづくり政策局や東北大学災害科学国際研究所を訪問し、行政やアカデミアがDRRに果たす役割、協働のしくみ等をお話いただきました。また石巻では、被災者の方々の声を聞き、震災の知見を共有しました。
最終日には、両者の相互理解を促進し、必要な時に協力し合えるように、JPFとANDMAの間でMoU(覚書)を締結。今後の現地における防災活動の推進、有事の際の円滑な協働に役立てていきます。
熊本県で大きく被災した15市町村で取り組まれている、コミュニティ形成の促進や支援団体間の情報交換や連携の推進がうまく機能するためには、被災者・支援団体・行政などの強みを生かした連携が必要です。JPFは、地元団体NPO法人「くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD)」と協同で、各市町村の「連携促進団体」の発掘およびサポートをしています。
2016年4月に発生した熊本地震。JPFは迅速に出動し、加盟NGOとともに緊急フェーズにおける被災者支援を展開しました。2016年9月末、現地のフェーズ転換が本格化するタイミングに合わせ、新しい支援戦略を発表。東日本大震災被災者支援をはじめ、各国におけるこれまでの支援経験から見通した、フェーズごとの課題をふまえ、第二フェーズ(復興フェーズ)として、「地元主導の生活再建を支える人材育成」と「人材を支える基盤強化」を中心に、「地域力強化(コミュニティ・エンパワメントとレジリエンス)」を目指し活動しています。
効果的な人道支援のためには、社会の様々な担い手が連携して臨むことが必要ですが、危機の直後や進行中に連携を構築することは容易ではありません。JPFは平時からの連携構築に努めています。
最近の実績では、マスコミ倫理懇談会全国協議会との災害報道研修会の共催による災害時の情報発信におけるメディア、NGO、自治体の連携のあり方の検討、メディア懇談会や勉強会などによる人道支援への相互の理解促進、緊急時の資金アピール組織の世界的ネットワークEmergency Appeal Alliance(EAA)への参加や連携活動、国内災害時の支援者間のコーディネートを担う全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)への参加、国連世界食糧計画(WFP)の物資備蓄庫活用のための契約、国際移住機関(IOM)のオブザーバー資格取得などが挙げられます。また、従来の企業との連携に加え、新たな形での連携による人道支援のイノベーションも目指しています。
2017年2月15、16日、JPFとマスコミ倫理懇談会全国協議会は、災害報道研修会「災害時に何をどう発信するのか~メディア、NGO、自治体による効果的な災害対応のために~」※を共催しました。当日は、メディア関係者約60名、人道支援NGOより約20名、自治体より20名、合計100名以上が参加。この規模で初めて、3者が一堂に会し災害時の連携の可能性を探るターニングポイントとなりました。
当日、2つの分科会を開催。藤代裕之法政大学準教授は、ネット時代の災害報道をテーマに、特に最初の72時間における情報の優先順位を決める「情報トリアージ」の必要性を強調。ジェンダー専門家の高橋聖子氏は、脆弱性、自助力を考慮した支援や報道をするために、一見強者の人も弱者になりうることを体感できるワークショップを実施した。
全体会議では、3者が熊本地震対応における課題や事例を共有。自治体からは、熊本市の大西一史市長がツイッター対応、熊本県の本田圭危機管理監が当時の報道対応などを紹介しました。メディアからは、熊本日日新聞の小多崇社会部次長が、人員が限られた地元紙としての悩みや自治体の仕事を妨げないような調整など、取材の実態や課題について共有しました。NGOからは、JPF阿久津幸彦国内事業(現・地域事業)部長が、東日本大震災の経験をいかしてスフィア・スタンダード(人道憲章と人道対応に関する国際基準)に基づいて作成した「国内災害対応初動調査票」に沿って各避難所を回り関係者と連携したこと、災害時の支援ニーズの変化はフェーズごとにある程度予測可能なことを伝えました。熊本地震被災者支援で活動したNGOによる、メディアの報道と対応に関するアンケート結果も注目を集めました。
メディア、NGO、自治体は、災害時にそれぞれの立場、役割から活動していますが、災害時には大量の情報が行き交い、必要な情報が届きにくくなっています。お互いの知見に関してより理解、連携を深めれば、相乗効果のある報道や支援が展開できる可能性が望めます。平時からの関係がなければ連携も始まりません。関係者のネットワーキングや相互理解のため、JPFでは今後も継続して活動を進めていきます。※肩書は当時のものです。
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2017年9月12日 第5回JPFメディア懇談会 「NGOの安全管理 -現状と課題-」。世界各地で治安状況が厳しくなる中、日本のNGO全体の安全管理能力の強化と認知度向上を目的に、有志NGOが集まり、2016年8月に設立した、JaNISS(Japan NGO Initiative for Safety and Security/NGO安全管理イニシアティブ)とともに、メディアと意見交換をした。
NGOがより有益かつ、裨益者に対して説明責任を果たせる支援活動が行えるよう、人道支援の質と説明責任に関する必須基準(CHS)や緊急時の教育の最低基準(INEE)などの普及に努め、支援の質とアカウンタビリティ向上ネットワーク(JQAN)の運営にも貢献しています。また、これらの国際基準を含めた人道支援に際して身に付けておくべき様々なテーマに関する研修などを通じてNGO能力強化も行っています。
さらに、日本のNGOの安全管理能力を高め、人々に必要な支援を的確に届けられるよう、NGO安全管理イニシアチブ(JaNISS)にも協力しています。
人道危機発生時により機動的かつ確実に対応が行えるよう、制度や手続きの見直し、体制の強化など基盤整備に常時取り組んでいます。例えば2016年度には助成ガイドラインを国内災害対応により即したものにし、またCHSを取り入れるという改正を実施しました。
また、人道危機発生時により速く大規模に緊急対応を行うために、平時からの資金準備にも力を入れています。その他、万が一JPF事務局が首都直下地震などの災害に襲われた場合でも国内外での支援活動を継続できるよう、BCPやITインフラの強化も図っています。