ユニクロ、ジャパン・プラットフォームを通じて、 能登半島の地震・豪雨で被災された方々にヒートテックを寄贈
人道支援における課題を解決するためには、国や地域を超えて、さまざまな立場の人々が力を合わせて連携していくことが不可欠です。
今、助けを必要としている人々に、迅速かつ効果的に支援を届けることができるよう、JPFは、これからもSDGsが掲げる理念「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」のもと、個人、企業、NGO、政府の連携の場としてのプラットフォームをより強固なものとするために進化し続けていきます。
SDGsとは? ~SDGsは世界共通の17の目標~
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで全会一致で採択された「持続可能な開発目標」です。
キーワードは「Leave No One Behind(誰一人取り残さない)」。2030年を期限とする世界共通の17の目標を設定して、貧困や飢餓、暴力を撲滅し、地球環境を壊さずに経済を持続可能な形で発展させ、人権が守られている世界を実現することを目指しています。
JPF誕生
NGO、企業、政府等が連携する市民社会のプラットフォーム
ジャパン・プラットフォーム(JPF)設立前、日本の各NGOは単独で迅速に包括的な支援を行うだけの財政基盤やキャパシティが十分にはなく、国際支援の輪に入れなかった実情がありました。紛争や災害が起き人道支援が必要な状況があると、資金集めから開始して現地に入れるのは1カ月後。各NGOの悩みは初動のための資金でした。
いかに早く現地入りして支援の場所を確保し、日本としてきちんと支援を届けていくか。2000年、世界の自然災害や紛争からの難民・避難民に対する緊急人道支援を、NGO、企業、政府などがそれぞれの強みを活かして迅速かつより効率的に行うための新しい仕組みとして、JPFが誕生。各得意分野を持つ40以上のJPF加盟NGOと情報を共有し、ともに支援プロジェクトをつくり、これまでに総助成額約670億円、120プログム、1,650事業以上の支援活動を展開してきました。
JPF設立以前は、日本人が現地の支援団体のコーディネーションミーティングに出ると驚かれる雰囲気でしたが、今では、国際社会の支援の一翼を担うべく国連機関との契約、資金を獲得する力、現地で支援分野ごとのミーティングをリードする力もついてきました。
脆弱層にフォーカス
本当に必要な人々へ洩れのない支援を
人道危機により難民・国内避難民となった人々の多くは、食糧や住居など、生活の様々な面で支援に頼らざるを得ない状況にあります。避難先から、再び別の場所に避難せざるを得なくなり、さらに脆弱な立場になることもあります。自然災害で被災した人々も同様に、移動を余儀なくされ、公的支援から洩れてしまうこともあります。
JPFは、特に弱い立場に置かれている人々が支援から取り残されることがないように、丁寧に着実に支援活動を続けてきました。現在活動中の「新型コロナウイルス対策緊急支援」においても、国内においては、高齢者、障がい者、女性、子ども、生活困窮者など、特別なケアを必要とする人々への支援を優先し、海外では、すでに脆弱な人々への支援を実施している現行のJPFプログラム実施国・地域において、既存の人道危機のさらなる悪化を防ぐことを目指して活動しています。
気候変動と飢餓
近年において増加傾向にある飢餓人口を、気候変動と密接不可分の関係にある課題と捉えて、JPFでは様々な食糧・農業支援を行っています。
最近では、昨年2019年12月以降に大量に発生し、農業地域などに多大な被害をもたらしているサバクトビバッタ対策のため、アフリカ・南アジア地域3か国において害虫の駆除活動・研修事業を支援し、地元コミュニティのレジリエンスを強化しています。
また、気候変動に伴う災害の頻発に苦しむ各地においても、支援活動を展開しています。例えば、頻繁に干ばつの被害に苦しむアフガニスタンにおいて、灌漑施設の改善事業、現金給付を通じた食糧支援などを行っています。
平和と教育
子どもたちの未来のために
難民、国内避難民となった人々が学ぶ機会を失わず、子どもたちが未来に希望を持てるよう、JPFでは各地における教育支援にも尽力しています。難民を受け入れるホストコミュニティと言語が違う場合、どの国の言葉で教育を受けるのかなど、支援には多くの調整が伴います。暴力を目にするなど、心に影響を受けた子どもたちへのケアのニーズも高いです。
REALs(旧JCCP)は、南スーダン・ジュバ市の国内避難民キャンプにおいて、若手リーダーの育成や啓発、異なる民族間の融和促進などの平和構築事業を実施しています。住民が主体となり、どうやって平和を取り戻していけるのか考えてもらうことで、争いに適切に介入し暴力を未然に防止できるようにすることを目指しています。近年「トリプル・ネクサス」と言われる、「人道、開発、平和の連携」というアクター間の垣根を越えた支援の形が目指されており、教育面も含め様々な形での平和に向けたサポートが重要です。
ジェンダー平等を目指して
災害、人道危機などの危機的状況下では、女性や子どもに対する暴力は増加すると言われています。過酷な環境に置かれた女性や子どもの尊厳や健康は常に脅かされているため、JPFでは直接的な暴力だけではなく、教育分野やトイレなどの衛生面でも女性や子どもが取り残されないような支援をしてきました。
例えばWVJは、バングラデシュの避難民居住区において、ジェンダーに基づく暴力(GBV)にさらされやすい女性たちの支援をしています。早婚・強制的な結婚、性的搾取などの問題に対し、心理社会的サポートや安全対策のための街灯の設置、女性が安心して過ごせるセーフスペースの設置など、多岐にわたる支援に取り組んでいます。
安全な水・トイレを
世界では、人口の約3割の約21憶人が安全な飲み水を入手できず、約6割の約42億人が安全に管理された衛生施設、トイレを使用できないと言われています。また汚水や不衛生な環境は感染症を引き起こし、コレラ、赤痢、A型肝炎、腸チフス等による下痢により多くの方々が命を落としています。
JPFでは、各難民キャンプにおいて、水・衛生環境の質や改善、その持続性のための支援を実施してきました。
例えば、バングラデシュ・コックスバザール県にあるミャンマー避難民キャンプでは、女性や子どもに配慮したトイレ建設し、尿処理施設整備、水浴び室建設やトイレ使用啓発トレーニングといった衛生関連サービスの提供など、ミャンマー避難民※及びそのホストコミュニティの住民の水・衛生環境の改善に取り組んでいます。
※JPFでは、民族的背景及び避難されている方々の多様性に配慮し、「ロヒンギャ」ではなく「ミャンマー避難民」という表現を使用します。
地域力強化(レジリエンス)
地元の人々が力を合わせて復興に向かうために
緊急人道支援の大切な目標のひとつは、現地の人々が復興に向かって地域主導で対応できる力、さらには次の災害時に被害を最小にとどめて立ち上がれる力(レジリエンス・地域力)を高め、最終的には、支援の機能が地元に移行されたり、支援の必要がなくなることです。JPFは、そのために地域に寄り添い、伴走してきました。
例えば、2016年の発災直後から継続している「熊本地震被災者支援」では、緊急支援後の復興フェーズとして、地元団体KVOAD※と連携し、地元NPOの人材育成および県域・市町村域で中間支援を担う活動を支える事業を展開。また、東日本大震災をはじめとする、過去の被災地から学ぶ研修なども実施してきました。
効果的でスピード感のある支援連携や情報共有を目指し、KVOADが中心となり熊本地震直後から開催している「火の国会議」は、災害から4年以上経つ現在でも継続し、300回以上開催しており、その後の国内災害における連携機能につながっています。
※くまもと災害ボランティア団体ネットワーク
災害支援の現場に届ける、NGOと企業の連携
「自社の技術を社会のために役立てられないか」。そう考え実行する企業は、この20年間で増加し、目覚ましい貢献をされています。JPFは、各企業や他NGOとともに、災害発生時の支援現場におけるニーズと、社会課題解決を目指す企業のリソースの連携を促進する、「More Impact」構想を2016年に掲げました。
例えば、被災地における課題の一つは、衛生面。「被災地での感染症リスク予防のための除菌アイテムがあれば」という現場のニーズが、三井化学をはじめ複数の企業の災害支援のイノベーションを目指す熱意につながり、「FASTAID™ウィルス・スイーパータオル」として結実しました。
「2020年4月から、衛生資材が不足している国内の公共施設や介護施設などに提供しています」と、JPFの姿勢に賛同し、More Impact立ち上げのきっかけを作った、三井化学ESG推進室の八木正さん。
JPFはこれからも、命を守る支援を現場に届けるため、様々な企業と連携していきます。
人道支援におけるメディア連携
人道支援NGOはメディアとどのように連携できるか。 JPFは、人道支援の現場と人々をつなげ、課題解決の促進を目指すため、メディアとの連携にも力を入れてきました。
2017年2月に開催した、JPFとマスコミ倫理懇談会全国協議会が共催した、災害報道研修会「災害時に何をどう発信するのか~メディア、NGO、自治体による効果的な災害対応のために~」は、メディア関係者約60名、人道支援NGO約20名、自治体関係者約20名と合計100名以上が参加。この規模で3者が一堂に会し、災害時の連携の可能性を探るというターニングポイントとなりました。災害時、それぞれの立場、役割から活動していても、命を守るという目的は同じ。お互いについてより理解、連携を深めれば、相乗効果のある報道や支援が展開できる可能性が望めます。
「台風15号被災者支援2019」では、BuzzFeed Japan記者同行により、支援現場やニーズを把握していただき、より被災者目線の多くの記事を出していただきました。
国連やグローバルなネットワークとの連携
支援の現場においてはもちろん、日本でも人々にその現状を知ったり理解したりしていただくために国連などの国際機関とも連携してきました。例えば、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とは、2013~2017年まで毎年「世界難民の日」にシンポジウムを共催しました。2017年6月20日の5回目、『アレッポからニューヨーク、そして東京へ:共に生きるために』では、国連大学に、支援関係者、学生、企業のほか、メディア16社を含む360人以上が参加。NGO、企業、政府や国連機関、難民を社員採用する企業、福島の避難区域のお寺の住職、ギタリストのMIYAVI氏、学生など、セクターを越えた多様な視点を交え、日本における創造的な難民支援の活動、共に人権を尊重しながら生きられる多様性のある社会について議論しました。
また、ヨーロッパを中心に世界各国9団体が加盟する、緊急災害や難民発生時に人道支援のため“協働してファンドレイジングを行う仕組み”をもつネットワーク、Emergency Appeal Alliance(EAA)に、日本メンバーとして加盟するなど、グローバルなネットワークにおいて、情報共有や議論をしながら、学び、寄与していくことにも力を入れています。
『THINK ABOUT A REFUGEE』キャンペーン
難民のことを思うとき、数ではなく、誰かの家族として、1人の“ひと”として想像してみる
2019年3月、「JPF×ART Project」として、美術家の奈良美智さんがヨルダンを訪問。シリア難民キャンプやアンマン市内のホストコミュニティで暮らす、シリア人家族や子どもたちと過ごしました。 「難民問題という大きなくくりではなく、家族という最少の単位で見ている」と奈良さん。出会った子どもたち一人ひとりに思いを馳せながら、『THINK ABOUT A REFUGEE』キャンペーンのためのカードデザインにご協力くださいました。カードの2枚目を大切な誰かにお送りいただき、奈良さんのメッセージの輪を広げる本キャンペーンには、120人以上が参加してくださいました。
従来の方法や支援関係者だけではもはや解決できない人道危機の現状において、国際協力NGOと多様な人々が連携・協力することは益々重要になってきています。
※2019年11月15日~2020年2月29日の期間中、「イラク・シリア難民人道危機対応支援」にご寄付くださった方、JPFの活動を継続的に支え難民に寄り添う支援となる「マンスリーサポーター」に入会くださった方に、奈良さんデザインのカードを2枚セットで贈呈。キャンペーンはUNHCR協会と共催(キャンペーン内容は異なります)。
JPFは、株式会社JTBとともに、SDGs達成に向けたNGOの活動を中学生・高校生により広く知ってもらうことや、体験を伴う学びの場を提供することを目的に、「17 GOALs PROJECT」を実施しています。
人道危機、気候変動、環境破壊などの地球規模課題から、日々の生活に関わる身近な話題まで、SDGsという観点を踏まえ、JPFスタッフが日本と海外の事情について紹介した、2020年~2021年の連載コラムを掲載します。
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